「科学的に効果がある」ってどういうことか、統計学的な視点から解説します。
「このTVCMは売上アップに効果があります」
「このサプリは体脂肪を落とす効果があります」
「笑いは寿命を伸ばす効果があります」
というような主張は、あちこちで見られますが、この「効果がある」
の意味をきちんと理解していますか?
中には、とんでも科学や、データを操作して、それっぽく見えるようにしている場合もあるので、騙されてしまうこともあります。
多分、多くの人は数字を示されると、そのまま信じてしまいますよね?それは、統計リテラシーを身に着けていないからだと思います。
空き巣に入られないようにするには、空き巣の手口を知っておく必要があるように、
数字やデータに騙されないようにするのは、騙し方を知っておいた方がいいと思ったので、そういった話をしていきます。
直感的な理解を重視するために、数式は一切でてきません。
動画で確認した方は↓こちら↓から
ということで、今日は、「科学的に効果がある」について、
それってどういうことなのか、お話ししていきます。
例えば、論文などで、「これは効果があります」主張をする時にも、
ほぼ100%統計的な妥当性をしめす必要があります。
「効果がある」と言っていいかどうか、
統計的な指標を、論文の中に提示しないといけないということです。
基準に使う指標としては、主に2つ。
・効果量
・有意確率
この2つです。
数字が出てくると飽きちゃうと思うので、
直感的に理解できる概念の部分だけお伝えします。
まずさっくりと用語の意味をお伝えすると、
・効果量
→効果の大きさ
・有意確率
→その差が誤差である確率
こんな感じです。
例えば、あなたが社内の企画で、A案とB案、どちらを採用しようか、
アンケートをとって決めようとします。
あなたには部下が二人います。
田中くん(なまけもの)
鈴木さん(まじめ)
この二人に、「アンケートを取って来てくれ」と頼みました。
それぞれアンケートを取って来てくれました。
田中くん:
5人に聞いた→3:2でA案でした。
その差、1.5倍です。
この差の開きが効果量です。(厳密にはちょっと違いますが、AとBの差の大きさ=効果量と思ってもらって問題ないです)
鈴木さん
50人にアンケートを取ってきました。
20:30でB案でした。
その差、1.5倍です。(田中くんと結果と一緒)
田中君が5人にとったアンケート結果では、Aが多く
鈴木さんが50人にとったアンケート結果では、Bが多い、という結果になりました。
この時、上司であるあなたは、この二人のどちらのアンケート結果を信用しますか?
多分、鈴木さんの結果じゃないですか?
なぜなら、田中君は5人にしかとってないけど、鈴木さんは、50人に取っているので、なんとなく信用できそうですよね??
統計センスを身に着けるうえで、この感覚が大事です。
データが多いほうが信用できる、と思う感覚ですね。
田中君の5人で3:2でA案が多いというのは、
その差って誤差の範囲なんじゃない?と疑いますよね?
統計学では、「誤差の範囲である確率」を計算します。
これを有意確率といいます。
AとBの差は、統計的に意味のある差なのかを検証するためのものです。
「統計的に意味がある差」のことを「有意差」と言います。
(※優位と間違える人が多いので注意しましょう)
「これは効果があります!」という主張を自信をもってしたい時には、
調査結果を統計解析にかけて有意確率を確認します。
その時、有意確率は、大きい方が嬉しいですか?小さい方が嬉しいですか?
有意確率って、誤差である確率のことなので、小さい方が嬉しいです。
慣例的には、5%未満だといい、とされています。
有意確率が5%とでたら、「AとBの差が誤差である確率が5%」という解釈をします。逆にいえば、「AとBの差が誤差ではない(何か意味があって必然的にそうなった)確率は、95%だろう」というように捉えてOKです。
有意確率の計算には、効果量とサンプルサイズを使います。
サンプルサイズは、データ数のことです。
有意確率(誤差である確率)は
サンプルサイズが大きいほど(データ数が多いほど)、小さくなります。
つまり、データをたくさんとったものの方が、誤差がない、つまり信用できる結果だろう、って判断するということです。
ということで、今回は、さらっと、効果量と有意確率について解説しました。
「科学的に効果がある」というのは、効果量と有意確率をもとにしているんだな、ということを覚えておいてください。
ただ、なかには、この原則を無視して、「効果がある」と主張するような、とんでも科学や、それっぽい感じにデータを加工して、有意確率を操作するようなこともありますので、そのあたりは、また別の記事で解説していきたいと思います。