小児鍼の道具・それぞれの用途(補法・瀉法)
前回は小児鍼がどんな施術で、小児のどんな症状に良いか、そしてどのような施術の種類があるかなどについてご紹介しました。
メイプル名古屋では鍼灸師の先生が使用する道具を販売しています。
現在、メイプル名古屋で扱っている小児鍼の道具は全部で35点あります。
それぞれ形や大きさ、金属の種類が少しずつ異なります。
小児鍼一覧はコチラ
https://www.maiple-nagoya.com/c/harihanbai/syounihari
小児鍼という施術だけでこれだけ形の違う商品があるのは鍼灸用品の中でも特殊です。
まずは前回にも紹介した小児鍼の3つ施術の種類と、それぞれに使用される小児鍼の道具についてご紹介します。
小児鍼の施術方法:接触鍼
接触鍼とは、皮膚に軽く接触させ刺激を与えることです。
この接触鍼に使う鍼は①集毛鍼、②錐鍼、③単入鍼などです。
接触鍼の道具:集毛鍼
集毛鍼(しゅうもうしん)とは、複数本の鍼を束ねた形状の鍼です。まさに先端に毛のような細い鍼がたくさん集まっている状態の鍼です。
集毛鍼という大きなカテゴリーの中にさらに4種類の鍼があります。
集毛鍼の一種
①松葉鍼……松葉のように根本から枝分かれして開いたような形状のもの
②ほうき鍼……掃除道具のほうきのように細かい鍼が多数ついた形状。松葉鍼とちがい、少し細めで柔らかく動かすことができる。
③バネ式鍼……中にバネが入っており、押すと鍼が筒(根本)に戻る。ポンプのような動きができる。
④車式鍼……現在はローラー鍼と呼ばれる。とげのある先端が車輪のようにくるくる回る。
松葉鍼
補瀉両用。先端は松葉のような針が7本付いています。
ホーキ針
短・中・長の3サイズあり、短いほど刺激が強く、長いほど刺激がマイルドになる。
5針小児はり(バネ式鍼)
補鍼に使用。
集毛針【箱入】 (強・弱両用) クローム
強刺激と弱刺激が両端についている。
強刺激は瀉鍼に用います。
弱刺激は補鍼に用います。
強弱の違いはバネの反発力の違いで、鍼の本数は同じです。
ローラー針 ゴールド 【強 ・ 弱】(車式鍼)
接触鍼の道具:錐鍼
錐鍼の形状の特徴は針先が鋭利であるということです。
三角鍼、槍鍼、平鍼、員利鍼といった鍼が錐鍼の仲間です。
錐鍼の一種
①三角鍼……先端から持ち手にかけて三角形の形状になった鍼
②槍鍼……掃除道具のほうきのように細かい鍼が多数ついた形状。松葉鍼とちがい、少し細めで柔らかく動かすことができる。
③平鍼……平べったい形状
④員利鍼……金属の棒の先端に球体がついており、その先端にでっぱりがある。
三角ばり
補(頭部)、瀉(尖部)として使用できる。
平鍼(ヘラ鍼)
皮膚針、皮膚を尖で軽くたたいたり、さすったりして血行促進、淋巴促進を図ります。
接触鍼の道具:単入鍼
単入鍼は、鍼先が鋭利ではなく、1本のまっすぐなタイプが多い。
てい鍼もこの単入鍼の一種。ツンツンとした刺激をリズミカルに行えるのがこのタイプ。
単入鍼の種類
1本鍼
楊枝鍼
バネ式鍼
振子式鍼
藤井式双管鍼
毫鍼
鍉鍼(ていしん)
小児鍼の施術方法:摩擦鍼
摩擦鍼では、皮膚を摩擦したり擦過(さっか)して刺激を与える方法です。
①掻鍼(かきばり)、②その他摩擦鍼の2種類に大きく分けられる。
摩擦鍼の道具:掻鍼
潮干狩りで使用する熊手のような形状になっている掻鍼(かきばり)はその形から「熊手鍼」とも呼ばれます。動物の手のような形状で、皮膚に接する部分はあまりとがっていないことも特徴です。
摩擦鍼の道具:その他の摩擦鍼
掻鍼以外にも摩擦鍼はあります。
輪鍼……先端に小さな輪っかがついている。
長刀鍼……刀のような形状で、片面が弧を描いた側で反対が反っている。これまでの左右対称の鍼と違う。
だるま鍼
バチ鍼……三味線のバチの形状に似ているところから呼ばれている。
歯車鍼……ローラー鍼のこと
バチばり
瀉針、掻く、さする。
長刀鍼
瀉針、補瀉両用。
皮膚をさすったり掻いたりします。
スプーンでも代用可能!自宅で小児鍼
ここまで紹介をしてきたのは鍼灸師向けの小児鍼の道具やそれぞれの使用意図でした。
小さなお子さんのいるご家庭ではお母さんお父さんも同じように小児鍼ができたらな、と思いますよね。
こうした専門の道具を使用しなくても、家庭で行うときには「ティースプーン」と「ドライヤー」を使用して簡易小児鍼ができるんです!
気になっている部位をティースプーンでなでたり、人の指でさすったり、
ドライヤーで冷えている部位をあたためたり。
基本的な考え方は、冷えている部分はあたため、気になる部分は優しく刺激を与える、といった感じでOKです。家庭の場合は。
具体的なアドバイスはぜひ小児鍼をしてもらった先生に聞くのが一番良いですね。
補瀉(ほしゃ)ってなに?
先ほどから当たりまえのように「補瀉両用」だとか、「補法(ほほう)」、「瀉法(しゃほう)」という言葉が出てきておりました。
東洋医学、鍼灸施術においてこの「補瀉」という考え方は施術の基礎です。
補法(ほほう)……足りない部分を補うこと。
川で例えると、水量が少なくなっていたり、勢いがなかったり、元気がない弱っているような状態のことを【虚(きょ)】と呼びます。虚(きょ)の状態には元気になるよう補うための補法を使用します。
瀉法(しゃほう)……悪い部分を取り除くこと。
川で例えると、川上にゴミや岩などが溜まってしまって水の流れを塞いでいるような状態のことを実(じつ)と呼びます。この実(じつ)の状態のときには、原因(=邪/じゃ)を取り除いてあげるために補瀉(しゃほう)を行います。
代表的な瀉法は「散鍼」と呼ばれる施術方法で、鍼を細かく浅く皮膚に触れて刺激します。
「幼きには瀉を用い、老いたるには補を用いる、常の道なり」
『打鍼当流別伝』より
もし、鍼灸師の先生から「補法(ほほう)に使用したい」と言われたら少し優しい刺激になりそうなものを、「瀉法(しゃほう)に使用したい」と言われたら比較的強刺激が与えられるもの、といった風に考えてみると探しやすいかもしれません。
商品ページにはそれぞれ補瀉どちらに使用できるのか記載があるので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
小児鍼の施術方法は大きく分けて2つある。
とがった部分のある鍼を軽く皮膚に接触させ、刺激を与えるのが「接触鍼」
比較的とがっていない、面のある鍼を使用し、皮膚面を摩擦したりこすったりして刺激を与えるのが「摩擦鍼」
それぞれの小児鍼の道具に「補法」用、「瀉法」用など用途がある。
「補法(ほほう)」は元気のない部分に元気を補う施術方法
「瀉法(しゃほう)」は流れを遮る邪魔者を取り除く施術方法
鍼灸師の先生は患者の状態を見て、補法が必要か瀉法が必要か判断する。
小児鍼の道具がなくても、家庭ではスプーンで代用ができる。
次回は、なぜちょっとした刺激を与えることで体に反応が起きるのか、医学的な観点からさらに一歩踏み込んだ解説をしていきます。
お楽しみに!
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