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【海外】子育て事情、ではなくて出産事情
子育てについては北欧がとっても進んでいるだとか、ヨーロッパ諸国では夕食は家族揃って囲んでいる、とかいろいろもう情報は溢れている気がする。もういいよ、と思っている人が多いのでは?
こういう情報をすでに多くの人が共有しているということはいいことかと思うけれど、それで実践してるんですか?っていうところまで到達していない。いろんな子育て事情、共有しまくるのはいいけど、実践しましょう、と思う訳で。
今回はフランスの子育て事情、ではなくて、出産事情についてちょっと。というのも、子育ての情報に比べて出産事情の情報はあまりない気がする。
フランスの出産事情は日本からみたらかなり「ドライ」だとか「合理的」と見られがちだけれど、母親や母性というのを変に神話化したりしないということでもある気がする。
ヨーロッパと言えば「無痛なんでしょう?」という質問が大半。でも実はフランスは無痛が多くてもイタリアは少ない。また、いろいろ補助金のシステムとかも日本とは異なる。以下は私の実体験を含みつつフランスの事情について少しだけ。
☆出産費用について
出産にお金がかからない、というのもなんとなく知っている人は多い気がする。
でもお金がかからない、というのではなくて、何を負担してくれるのか、を見た方が正確である。
フランスでは『100% maternité』という名目で医療保険が妊娠6ヶ月目から出産日より12日後までのすべての医療費、妊娠と直接関係あるものもないものもすべて負担する、というものがある。私も妊娠中に風邪をひいたときの薬代などすべてが負担ゼロになって驚いた。
この保険が何をカバーするかというと。
出産前:7回の検診、3回のエコー(フランスではエコーはあまりしてくれない)、8回の出産準備クラス費用(病院で開催してくれる)、歯科検診費用、羊水検査費用
出産時:出産医療費、硬膜外麻酔を希望した場合はその費用、12日間までの入院費用、救急車など医療的に必要であった場合の病院までの交通費
産後:出産後8週間以内に受ける検診、希望する場合は腹筋及び会陰のリハビリ費用(➡こういうケアこそが母親というものを神秘化して逃げるのではなく、きちんと守る、ということだとおもうのですが)
そしてその他、医療費、薬代、検査費用などすべて負担ゼロ。
☆無痛分娩について
フランスの出産の60%が無痛分娩。もちろん、自分で決める。何ヶ月も前に予約をしなくても大丈夫で、わりと大きな病院であれば陣痛がきて苦しくなってきたときに「やっぱり無痛がいいです!」と訴えても大丈夫だとか。
そしてそれは決して「恥ずかしい」とかいうことはない。私もごくごく一般的な流れに乗って、自然とどの妊婦とも同じく「無痛分娩」になったという感覚。
もちろん、無痛分娩は硬膜外麻酔という「麻酔」なのでこちらの承諾が必要。ある日突然「そろそろ麻酔のことについて」と言われて、「しかもあなたは双子なので産後のいろいろなシチュエーションを考えると医師としては無痛分娩にしてほしいですね」と言われる。医療的な問題も考慮して欲しいと半ば頼まれるようにして無痛分娩になった。
こんなことをいうとドライだとか言われるのかもしれないけど、私は痛みを乗り越えてこそ母になる的な考え方がなんか嫌だ。そう思う人がいてもいいけど、私はそうではない。だからここであえて、無痛はいやだ、とは言わなかった。
ちなみにこちらでは最近自然分娩が増えてきているとも聞く。それは苦しみたいから、ではなくて、もっと自然な形で生きたい、というようなライフスタイル全体に関わる思想的なところからきている。
私はどうしても「苦痛を乗り越えて母になる」、なんていう母性神話的な話はうさんくさいと思ってしまう。
なぜって、そういう神話を作り出すことで、「やっぱり母親というのは特別。父親にはできない。」みたいな情けない論理を許してしまうことにつながるわけだから。
と言ったら怒られるかな。
とにかく、フランスでは「子供を産むということにお金がかからない」。(そんなこと当たり前であって欲しいが)。そして無痛だろうがなんだろうが、「妊婦に選択肢がある」。
そもそも出産に最低ウン十万円かかるとか、少子化だと騒ぎまくっているわりにはヘンな話だよなー、と。
もちろん、フランスの病院に入院をしてみれば、「テキトーすぎでしょ!」と思うこと、「ちょっと間違えたら医療ミスってやつなのでは?!」というようなハプニングもあったし、いろいろと思うところはあるのだけれど、それはまた今度。