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【患】がん患者さんにお勧めできる在宅医のポイントをお伝えします。#112

こんにちは、心療内科医で緩和ケア医のDr.Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。

緩和ケアは患者さん、ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています。

今日のテーマは「がん患者の理想の在宅医」です。

動画はこちらになります。

今日はがん患者さんにお話します。

私も緩和ケア医ですので、自分が最期を迎えるときのことを、しばしば考えます。
やはり、住み慣れた家で最期を過ごしたいと思ったりします。でもそのためには、自分をしっかりと診てくれる医療者が必要です。

まず在宅医の先生ですね。

もし私ががんの終末期に、在宅に戻った時、どんな在宅医に診てもらいたいか、理想の在宅医とはどんな先生かなど、色々考えたことを今日はお話したいと思います。

この記事を見ることで、最期まで自分を支えてくれる在宅医に巡り合い、満足して自宅で過ごせるがん患者さんが増えればうれしいです。

今日もよろしくお願いします。


私の理想の在宅医

親しい訪問看護師さんが、最近の在宅療養の患者さんのことについて話してくれました。

彼女は、このように話してくれました。

「昔は治療医の先生から、これからのことを説明されずに在宅にもどるがん患者さんが多くて、私たちも患者さんも混乱することが多かったんです。でも今の治療医の先生は患者さんにきちんとこれからのことを話してくれていることが多いので、患者さんはしっかりと自己決定して自宅に帰る人が多いんです。だからそんな患者さんは、苦痛なく最期まで自宅で過ごしたいとはっきり言います。患者さんは、在宅医には自分に残された人生に最期まで付き添ってくれることを望んでいます。」

私はさらに質問を続けました。
「どんな在宅医が理想だと思いますか?」

彼女は言いました。

「そうね、様々な苦痛を取るために、最善の方法を患者さんと一緒に考えてくれる医師が理想だと思います。そして、患者さんが、自分の良いところ、情けないところや自分が嫌だと思っている部分をさらけ出しても、しっかりと受け止めてくれる医師ですね。症状緩和のテクニックにたけた医師が良いのは当然だけど、テクニックだけではなく、患者さんのこころにも寄り添ってくれる医師が良いと思うわ。
患者さんの今まで生きてきた人生に興味を持って、色々聞いてくれる先生は尊敬できるわ。」

彼女の理想の在宅医の話を聞いて、私も考えてみました。

もちろん、つらい症状は絶対取ってもらいたいです。でもそれだけだと物足りないです。自分の話を聞いてほしいと思います。

たわいのない話、世間話、自分が好きな音楽や本の話。そして、自分がたどってきた人生。失敗もあり、悔しかったこと、孤独になり、とても不安だったこと。人生で成功したこと、とても嬉しかったこと、楽しかったこと、幸せだと思えたこと。

いろんな話をして、それを聞いて受け取ってくれる医師が、私の主治医になってほしいと思います。私の人生に寄り添い、付き添ってくれることをこころから望んでいる在宅医に診てもらいたいと思います。

これは私が考える理想の在宅医です。皆さんはどうですか?あなたも自分の理想の在宅医について考えてみてください。

早いうちから考えることが必要です。治療中から考えることが良いかもしれません。私なら、進行・再発がんと言われた時から考えたり、探すかもしれません。そして可能なら、会ってみることをお勧めします。

あなたが最期まで自宅で過ごしたいと思っているのであれば、あなたが元気なうちから在宅医に会って、あなたの目で確かめることがとても大事です。


理想の在宅医の条件

がん患者さんにとって、理想の在宅医の必須条件とは何でしょうか?具体的に考えていきたいと思います。

1. 24時間対応
24時間対応ができることは、必須ですね。

在宅療養支援診療所と名前のついている在宅医は24時間対応をしています。もちろん、訪問看護ステーションも24時間対応をしているところを選びましょう。

2. 在宅看取りの件数が多い
がんの在宅看取りの件数は、ネットなどで調べると表記されていることもありますが、在宅医の先生から直接聞くと、だいたいは答えてくれます。

年間100例以上の看取りがありますと言う在宅医の先生もたまにはいますが、多ければ良いというわけではありません。件数だけで判断をしないでください。

ただ看取りの経験はありませんとか、ここ5年間で2例です、といった在宅医の先生は、あまり在宅での看取りに積極的ではないと考えたほうが良いかもしれません。やはり年間数十例以上は看取っています、という先生にした方が良いです。

3. 医療用麻薬を使える
医療用麻薬が処方できない、していない先生は、そもそもがんの緩和ケアはあまり得意ではない、と考えても良いかもしれません。医療用麻薬を処方できることは、がん患者さんにとっては必須だと思います。

4. 皮下投与を取り入れてくれる
テクニカルな面ですが、薬剤の皮下投与ができる在宅医の先生は、「できる」先生だと思います。

皮下投与を在宅で行っている先生は、残念ながらまだ少ないのですが、したことがなくても、やりましょう、と言ってくれる誠実な先生も良いと思います。

今後は在宅での薬剤コントロール法としては、増えていくものだと思っています。

5. チーム医療ができる
在宅医療は、医師1人ではできません。看護師、薬剤師、歯科医師、リハビリ担当者といった医療者をはじめとして、ケアマネージャー、ヘルパーなどの福祉担当の人たちの協力なしでは、在宅医療は成り立ちません。

医師も在宅チームの一員です。医師であっても、利用者・家族のためにチームで支援できるマインドを持っていることは、とても大事なことだと思います。

以上は私ががん患者さんが在宅医を探すときに必須だと思っているものです。他にあなたにとって大切だと思うことを、リストアップしてください。

ぜひこの内容を、あなたが自分の理想の在宅医を探す時のガイドにしてください。

しかし、あなたの住んでいる地域には、あなたの理想とする在宅医がいないかもしれません。そんな時でも、訪問看護師や在宅薬剤師といった他の医療者、ケアマネージャー、ヘルパーがサポートすることはできます。

そのことで、自分らしい最期を迎えることはできる、と先ほどの私の友人の訪問看護師さんは言っていました。チームでケアをするという視点も、忘れないでください。


在宅医の探し方

それでは、あなたの理想の在宅医の探し方についてお話します。

1. メディカルソーシャルワーカー(MSW)
まず、あなたが治療している病院のソーシャルワーカーや相談員の人に、「私の地域の在宅医のリストをください。」と聞いてみてください。

その時に、在宅療養支援診療所かどうか、どんな医療行為ができるか、看取りの数など、公表している情報は得てください。

ただ、良い在宅医というストレートな質問では、立場上言えないことも多いので、まずは情報収集だと思う方が良いでしょう。

2. インターネット
今は、インターネットを活用する方法が早いですね。

各都道府県にそれぞれの医療ネットがあるはずです。例えば、奈良県は「がんネットなら」というものがあります。リンクを貼っておきますので、どんなものか見て参考にしてください。

そこには、診療連携拠点病院のがん相談支援センターや患者サロン、患者会などが紹介されています。また、公開講座やオンラインセミナーなども紹介されていますので、積極的に参加し、講演している先生に声を掛けるなどをして、在宅医の先生の情報を得ることも良いと思います。

あなたの地域にもそのような情報があるかもしれません。すぐに見つからなくても、あきらめないで探してください。

がんネット(スペース)○○県

で検索すると、差はありますが多くの都道府県で情報が出てきます。

3. 知り合いの医療者に聞く
知り合いの医療者がもしいれば、その人から聞いたりすると、繋がる可能性があることもあります。

いずれにしても、色々な情報を自分でチェック、吟味することが大切だと思います。そしていいと思う在宅医が見つかったら、その在宅医と面談してみてください。

電話をして「将来、在宅治療をすることになるかもしれないので、今からお話を聞いて準備をしておきたいと思っています。面談をお願いしたいです。」と聞いてみてください。

会ってくれない在宅医なら、そもそもやめたほうが良いかもしれません。そして、面談時に色々質問をして自分の目で確かめてください。この人なら、という在宅医が見つかったら「もし在宅療養になったときはよろしくお願いします」とお伝えしておけばよいでしょう。

以上、良い在宅医と言うテーマで、色々お話してきました。

自分の最期の時期につきあってくれる医療者はとても重要です。ぜひ後悔しないよう、早いうちからの準備をしてください。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。

このnoteでは緩和ケアを皆様の身近なものにして、より良い人生を生きて欲しいと思い、患者さん、ご家族、医療者向けに発信をしています。

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Dr.Tosh /四宮敏章
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