【明るい未来をつくる】これができるようになるだけで、次の診察が変わります【患】#170
こんにちは、心療内科医で緩和ケア医のDr. Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。
緩和ケアは患者さん、ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています。
今日のテーマは「主治医に質問しにくい人へ」です。
動画はこちらになります。
先日ある患者さんからこんな質問を受けました。
こんな質問でした。実はこのように感じている方はとても多いのです。
今日は、主治医に質問しにくいなと感じている人。
主治医ともっと信頼関係を作りたい人。
自分の治療を理解し、納得して受けたいと思っている人にお話します。
この記事では、質問しにくい医師にどのようにアプローチすればいいのか、具体的な対策法もお話しますので、ぜひ最後までご覧ください。
今日もよろしくお願いします。
質問しにくい主治医にも勇気をもって質問しよう
「主治医の先生となかなかうまく話ができません。」という患者さんの声はよく聞きます。
緩和ケア外来で、「主治医には聞きにくいので、代わりに先生から聞いてくれませんか?」などと頼まれた時は、場合によっては私が主治医と話します。
忙しそうな主治医にいろいろ聞くと悪いのではないかとか、気を悪くされて今後の治療に差し支えるのではないかと心配する方もいらっしゃいます。
でも、そんなことはありません。
ほとんどの主治医はなんでも話してくれますし、特に問題もありません。冒頭で紹介した患者さんの主治医も、私が話すとちゃんと答えてくれました。
しっかり患者さんのことを考えて、これからの抗がん剤治療にも備えているという印象でした。ただ彼は、外来を始めたばかりの若手の先生で、まだ患者さんとの会話に慣れておらず、余裕がなかったのかなと感じました。
「主治医となかなか話せず、質問ができません。」と感じている方は、ぜひ勇気をもって、主治医に自分の知りたいことを聞いてください。そして、治療について自分がわからないことを理解し、納得してから治療を始めてください。
がんの治療は、つらい副作用があったり、薬を変更しなければならない場合もありますが、主治医となんでも話ができるようになっていると、安心して治療を続けることができます。ぜひあなたのためにも、あなたから声をかけて、信頼関係づくりを始めてください。
今後の長期にわたる抗がん治療において、何よりも必要なことは、主治医との信頼関係なのです。
初期がんで、手術などの治療で完治ができる場合でしたら、治療はお任せでもさほど問題はないかもしれません。しかし、再発・進行がんの場合、治療は長期に及びます。そして、その都度その都度の最良の判断が必要になってくるのです。
その時、主治医との信頼関係がなければ、安心して治療の判断ができなくなるでしょう。あの時ちゃんと主治医に聞いておけばよかった、そしたらもっと違う選択をしたかもしれない、という声も私は患者さんからしばしば聞きます。
私は、あなたに後悔してほしくないのです。これはあなたの命の問題です。
あなたの身体のことを一番わかっているのは主治医です。あなたの命は、いわば主治医に預けたようなものなのです。ぜひあなたから、主治医に話しかけるようにしましょう。
それでもやっぱり聞きにくいという方もいると思います。
そんな方のために、今から質問しにくい医師にはどんなタイプがいるのか。そしてタイプごとの対策についてお話します。いわば主治医別傾向と対策です。どうぞご覧ください。
あなたの主治医はどのパターン?
質問しにくい主治医のパターンはおおよそ4つに分けられるのではないかと思います。
1. 経験の浅い若い医師
まずは、経験の浅い若い医師です。彼らは経験が浅いので、医療行為を含め、様々なことに慣れていないことが多いのです。したがって余裕がありません。
外来では医師は検査をし、そのデータを解釈し、治療の可否を判断し、必要な薬を処方、さらには、患者さんを診察して、カルテにも記載しなければいけません。そして次の治療を計画し、予定を立て、さらに検査の日程も入れる。
それらのことを、一度に全部ひとりで、しかも限られた時間でしなければいけません。慣れていないと、こなすには至難の業です。
また若い医師の多くは外来だけでなく、入院中の患者さんの治療も担当しなくてはいけません。
さらに外科であれば、手術も週に数回はあります。当直で徹夜になることもあります。医師は大変忙しいのです。特に若い医師はそうです。
また、彼らは患者さんにきちんと説明しなければいけない、という意識が強い傾向があります。上司や、学生の頃の講師からそう教えられているからです。
ですので、自分が話すので一杯一杯になり、患者さんから質問を受けるという余裕がないのです。私自身も若い頃はそうでした。若い多くの医師はそうだと思います。このタイプの医師への対策は後で述べますが、まずはこれらのことを理解してあげてください。
2. コミュニケーションが下手な医師
コミュニケーションそのものが苦手なタイプも、実は医師に多いです。そういう人は、自分の思いを人に話すことはもちろん、人の気持ちを聞いて、理解することが苦手です。
彼らの特徴としては、「気持ちを推し量る」「場の空気を読む」ということが苦手か、そもそもできないことが多いです。そういった医師の多くはとても真面目でコツコツと努力できます。患者さんのことは思っているのですが表現が苦手なのです。そんな医師も多いことを知ってください。
3. ワンマンタイプの医師
3つ目は、ワンマンタイプの医師です。患者さんが治療の意思決定をするのではなく、医師が決めた方がいいと思っているタイプです。年配の医師に多いです。
最近は減ってきましたが、私が医師になったころは、結構いました。「俺についてきたら問題ない、つべこべ言うな。」という感じでしょうか。
昔は、患者さん側もお任せ医療に慣れており、この医師―患者関係が当たり前の時代もありました。しかし時代とともに、徐々に化石化しているとは思いますが、まだいることはいるので、対応が必要です。
4. 忙しい医師
最後の質問しにくいタイプの医師は、忙しそうにしている医師です。このタイプが一番多いのではないでしょうか。
午前だけで外来待ちが、40人、50人は当たり前、という医師です。待合室には、患者さんがたくさん待っています。それを見ていると、患者さんの方が気を遣いますよね。
有能で、患者思いの医師ほど人気があり、その結果患者さんが多くなるのでしょうね。でもそれでも対策はありますので、安心してください。
主治医のパターン別アプローチ
それではそれぞれパターン別の対策法についてお話します。
1. 経験の浅い若い医師
経験の浅い若い医師は、先ほども申し上げたように、余裕がないだけですから、少し余裕がありそうな時を見計らって話すのが良いと思います。あるいは、聞きたいことをあらかじめ紙に書いて手渡すことも良い方法だと思います。
「忙しいと思いますが、頑張ってください。」とか「頼りにしています。」といった声かけで彼らは安心し、余裕が少し出てきます。
彼らは患者さんの力になりたいという思いを持っています。そのことを信じてあげてください。
2. コミュニケーションが下手な医師
コミュニケーションが下手な医師かどうかは、しばらく付き合ってみるとわかってくることが多いです。
皆さんがしんどかったり、あるいは逆にうれしそうなときでも、ほとんど変わらない対応をすることが多いからです。彼らは、音声による対話が苦手です。
言いたいことを紙に書いて渡すと、通じやすいと思います。質問もぜひ紙に書いて渡しましょう。これだけでコミュニケーションが変わってきます。
3. ワンマンタイプの医師
あなたの主治医がワンマンタイプだと思ったら、大事な話の時にはあなた一人では聞かない方が良いでしょう。ご家族や信頼できる友人に一緒に来てもらいましょう。
もし、放射線治療や抗がん剤治療を他科でしている場合、その医師に間に入ってもらうこともできます。緩和ケアチームに介入してもらうことも有効です。
そういった医師に代弁してもらうと、うまくいくこともあります。言葉は悪いですが、ワンマンタイプの医師は権威に弱い人が多いと私は思います。
4. 忙しい医師
忙しい医師は時間があまりないですから、質問を紙に書いて渡すことは良い方法です。また同席している看護師さんやほかの医療スタッフに聞いてもらって、その人に伝えてもらうことも良いと思います。
彼らは患者さんの話をしっかり聴きたいと思っているので、間接的なコミュニケーションでも問題はないからです。
以上質問しにくい医師に対する傾向と対策について話してまいりました。
最後にあなたにお話ししたいことがあります。
患者さんから医師に話すことはとても勇気が必要なことだと思います。質問ひとつとっても、批判になるのでは、文句を言っているように聞こえないのかなど、色々考えてしまうでしょう。
でも勇気をもって、医師に話しかけてほしいのです。
私も昔は今まで話してきたような質問しにくい医師でした。しかし、患者さんから言われたことで、色々なことを学べました。言ってくれた患者さんにはとても感謝しています。
ほとんどの医師は、患者さんのために自分を成長させたいと思っています。そして、この成長は患者さんとのやり取りで得られるものだと思います。
これはあなたに負担をかけることかもしれませんが、ぜひ頑張ってほしいと思っています。よろしくお願いします。
あなたに伝えたいメッセージ
今日のあなたに伝えたいメッセージは
最後まで読んでいただきありがとうございます。
私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。
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