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【ミニ小説】 迷い込んだ空間で
一,
「迷子になったな…」
ひとり呟いてみたがなにも変わらない
あたりまえだ
周囲には誰もいないのだから。
閑散とした空間で ひとり考えを巡らせる
なぜ出口が消えたのか
入口といった方が正しいのかもしれない。
だが、そんなことはどうでもいい。
先程入ってきたはずのそれは、
わたしの気付かない間に
消えてなくなっていた。
いや、そうではない
透明な壁で塞がれていたのだ。
【ミニミニ小説】 聞いてしまった一言
「あーあ。いもむし、踏まれちゃったね。」
小さな男の子が、母親を見上げてそう言った。
左側から不意に聞こえた、大声でも小声でもなく、ほとんど無感情で発せられたその台詞は、私をぞっとさせた。
たった今、自転車で親子の横に停まったばかりだったからだ。
目の前の信号待ちをする、親子と私。
「そうだね。」
と、母親は小さな声で返した。
まるで、私に気を遣っているかのように。
“踏んじゃった
【ミニ小説】 緑色の建物には
──────────────────────
1,
私が暮らしている町の
いつも通り過ぎるあの場所に
あの日、
大きな建物が建てられたそうだ。
誰が建てたのか
何のためなのか
誰も知らなかったそう。
はじめは誰も興味を示さず
ただ通り過ぎていただけ。
あるとき、
誰かが建物に入ったそうだ。
建物には
扉も仕切りも
何も無く、
簡単に中に入れたそうで、
その中には