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『仮面ライダー響鬼』感想

東映特撮YouTube公式チャンネルの無料週間配信で待望の『仮面ライダー響鬼』が配信されたので半年間で完走。
皆もお気に入りの特撮の配信を毎週見よう!

仮面ライダー響鬼のここが良い

・主人公はタイトルになっている響鬼ではなく響鬼と出会った少年明日夢。明日夢が憧れるに相応しい存在として響鬼さんは全話通してかっこいい大人=ヒーローとして描かれる。
・非常に完成度高く練り込まれた世界観。響鬼達「鬼」は人助け組織「猛士」の一員として描かれ、敵との相性や担当地区で誰が戦うか決まり、現地に派遣される。
・毎回「童子・姫」という一対の人型怪人と「魔化魍」という怪獣の組み合わせと戦う流れは、響鬼たちが現象と戦っている事が分かりやすい様式美だった。また「童子・姫」はそれぞれほぼ全て同じ人が演じており、にもかかわらず性格も怪人も異なるため異様な存在である事が感じられ、演者にも愛着がわいた。
・主人公が高校生の明日夢であるため日常パートが多く、戦闘パートと同時に流すこともある。これは子供の日常の裏で響鬼のように人助けをしてくれている大人がいる事をよく表現できている。
・主要ライダー3人は明日夢視点での立ち位置も違いがあり良くキャラ付けできている。
・明日夢が鬼になるのかどうか、後半ここに話を移す上で明日夢の視線を変える競争相手として桐谷京介の存在は大きく、意味のあるテコ入れだった。
・劇伴が佐橋俊彦(『仮面ライダークウガ』『機動戦士ガンダムSEEDシリーズ』など)
・シリーズ初のインストOPの導入とクウガぶりのEDの復活。OPは本編内容に合わせて複数の楽器verがありED映像は数話毎に撮影場所が変わるなど力の入れ様も伝わってきた。
・あくまで明日夢の成長の物語なので、「オロチ現象」という大きな出来事はあれど鬼の戦いに終止符が打たれる事は無く、明日夢の将来の選択を最終回に描いた。

仮面ライダー響鬼のここが悪い

・本来の視聴者である子供に理解しにくい作風。大人が見るドラマとしての完成度は1話時点から高く、周りの大人たちが明日夢を心配しながらも見守る様子が多く描かれるが、まだ登場人物の考えを図る事が出来ない子供には理解が難しく、明日夢に共感できねば何をしているのかよくわからない。
・日常パートは多いが学校パートが少ない。明日夢の進路の悩みや挫折に吹奏楽が引き合いに出されるが、あまりフォーカスされることは無く実際に明日夢が吹奏楽に精を出す場面も無いため、お世辞にも設定を活かしているとは言えない。
・ヒロイン持田ひとみの存在感が薄い。明日夢とお互い意識しているし、猛士側のヒロインと言えるあきらだっていたので、三角関係を描くなどもう少しロマンスに寄せても良かった。
・朱鬼とかいうあきらと斬鬼を退場させるためだけに作られた大根役者。
・「童子・姫」+「魔化魍」という様式美を崩して街中に小型の魔化魍を出すようにした。元々人目に付かないから成り立ってたような鬼の戦いが、街中で起きては事後処理の心配しかおきない。
・響鬼装甲が登場以後すべての戦闘が装甲で済まされている。ヒーロー物として強化形態は欲しいが、当初あった各鬼の差別化を無視し、他の鬼が装甲の前座となるあまりにも残念な運用。
・京介登場から弟子入りの話までに時間をかけすぎ。せっかく視聴者からがっつりヘイトを貰える強烈なキャラを入れたのだからその勢いのまま話を持って行って欲しかった。何のためのテコ入れだ。

総評

ボーイ・ミーツ・ヒーローと言える作品で、日常と非日常を上手く表裏的に見せる事が出来ている。一方で明日夢の本来の日常の学校生活の描写が少しおざなりで、期待した学生らしさが見れなかった部分がある。
またドラマと世界観の出来栄えは素晴らしいが、とても子供ウケが良いとは思えない内容で、案の定後半はテコ入れが入った。

テコ入れは良し悪しだったが、世界観の引継ぎが出来てるとは言えず、後半は前半の良い所が消えてしまった部分が多い。
ドラマとしての世界観と完成度が1話時点で非常に高く、そのまま作り上げる事が出来れば文句の無い作品となったに違いないが、結果はテコ入れにより中途半端な内容に。
子供向けの特撮ならではの柵に勝つ事が出来なかった一作。

とは言え「鬼に変わる大人ヒビキに憧れた少年明日夢の成長物語」としては描き切ってくれたので、改めて全話見た結果当時の自分の憧れが裏切られる事は無かった。
自分は昔のまま「仮面ライダー響鬼」という作品が好きです。

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