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事故物件に住んじゃった話


南部です。

私はおそらく、ロサンゼルスで事故物件というものに住んでしまったように思う。(向こうには事故物件なんて概念も言葉も無いですが)
ロサンゼルスはサウスセントラルに住む前、私と友人はブレントウッドという高級住宅街に住んでいた。しかしその家、場所の割に家賃が安く、私たちは入居を即決した。

確かに古い建物で、ランドリールームへ向かう廊下は昼間でも薄気味悪かった。

入居してすぐのこと。
何かがおかしいのだ、異常に寝つきが悪いし、寝て起きると身体中に引っ掻き傷がある。痒くて掻きむしったというような傷ではなく、スッスッと身体中に一本ずつの傷があるのだ。
最初はあまり気にしていなかったが、毎日傷は増え続け、ある日起きると顔にビッと傷が一本ついていた。
これはおかしい。この家にはなにかある。そう思った。

そんなこんなで入居し一週間ほどたった頃、私は自室でひとりベッドの上で映画を観ていた。すると、壁をドンドンと叩かれた。
私のベッドの横の壁を隔ててマンションの廊下だった。
ルームメイトの友人でも遊びに来たのかと思っていると、また、ドンドンと壁を叩かれた。
私はリビングへ出ていき、ルームメイトに、「今誰か来た?ノックみたいな音が聞こえたけど。」
というと、「誰も来ていないし、そんな音は聞いていない」と。
私はおかしいなと思いながらも部屋に戻る。

今度はドンドンドンドンドンと聞こえた。そこで引っ掻き傷事件も相まって私の感情は恐怖を超え怒りに変わり、部屋の壁を蹴飛ばした。するとその音も、謎の切り傷も、全てピッタリ止んだのだ。

幽霊には怒るのが効果的、と聞いたことがある。
私の友人は幼い頃に実家で心霊現象に悩まされており、ある日我慢の限界に達し、「テメェ、いい加減にしねえと二度殺すぞ!!」と叫んだところ、心霊現象がピッタリなくなったというのだ。
この世に恨みがあるのはかわいそうだが、私たち生きている人間にだっていろいろあるのだ。
100歩譲ってその恨んでいる相手のことを怖がらせにいくのが筋だろう(いや筋ではない)

とそんなこんなで怪奇音と謎の切り傷は止んだのだが、そこからわずか2週間ほど経った頃。
その日私は当時お付き合いしていた彼と初めての喧嘩をしてしまい、ズーーーンと背中から効果音が出るほどに落ち込んで帰宅した。
時刻は深夜2時。スマホのバッテリーは1%。
私たちの家は2階だったのだが、階段がエレベーターの裏にあったのでいつも手前にあるエレベーターを使っていた。

ズーーーンとしながらエレベーターに乗り込む。

ドアが閉まり、
2階のボタンをプレス。

点灯しない。

もう一度、二度、三度と押しても点灯しない。
壊れたかと開くボタンを押す。


点灯しない。


閉じ込められた。もう非常ボタンも何もかもプレスした。


鮮明に覚えている。残り1%のバッテリーでルームメイトに必死に電話をかけた。出てくれた。

「エレベーターに閉じ込められて、ボタンもつかなくて、」

パニックで言いたいことだけ言って電話を切ってしまった。
するとそのまま、エレベーターがいきなり動き出し、地下へと連れて行かれた。

地下へ降り、ドアが開く。

絶対お化けが乗ってくるかと思ったが、何も乗って来ず。
しかしドアが開いた瞬間、歪んだ図太い笑い声と子供の笑い声が聞こえた。

怖いけど閉じ込められるよりマシだ。エレベーターから転がり出る。

そして真後ろからルームメイトの「マイ!!!」と呼ぶ声が聞こえた。

「うわああああ!ここだよ!怖い!ここにいるよ!」

ルームメイトの声の方へ走る。
そして階段で地下から2階へ駆け上がると、ルームメイトがまさにアパートのドアを開けて助けにきてくれた。


助かった…


あれ、なぜ地下にいる私の真後ろでルームメイトの声がしたんだろう?

その頃ルームメイトは2階の家の中にいたはず。


終焉

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