隣の祐君第140話結局三人で・・・
アパートに戻る途中、祐君は電車の広告をじっと見ている。
だから、私、純子も祐君と同じ方向を見る。
「メディチ家の至宝?」
私は驚いた。
日本の古文専門と思っていた祐君が、かのフィレンツェのメディチを見ているのだから。
祐君は、ポツリと恥ずかしそうな顔。
「東京都庭園美術館ですね、アパートに書類を置いたら」
私は、その中途半端な言葉に動揺した。
「誘ってくれているの?どっち?」
そして、そんな祐君にムッとした。(しっかり誘いなさい!と思った)
だから、ムギュッと押し付けた。(祐君は、最近抵抗しない・・・この感触、好きなのかな・・・私は好きだけど・・・あかん・・・本題から、また外れた)
祐君の言葉は、たどたどしい。(それがキュンキュンするんや・・で、トロトロになる)
「宝石とか、美術とか、イタリア中世史にご興味は?」
私は、言葉を選べなかった。(元文芸部の部長が、あかん!と思うたけど、あかんままや)
「行きますって!祐君」(マジにそのまんまや・・・)
祐君の顔が赤くなった。(どうやら誘うことに、迷っていたらしい・・・まあ、いらんことを・・・いつでもどこでも、ご一緒させていただきますって!)
祐君
「荷物だけ置いたら、すぐに」
私
「着替えないの?」
祐君は、真面目顔。(この真面顔に弱い・・・また、トロトロや)
「僕も純子さんも、スーツ姿」
「せっかくメディチの秘宝を見るんです」
「襟を正して」(ほお・・・また、惚れることを・・・)
私
「そうね、その姿勢は大事かな」
そんな話をしながら、千歳烏山の駅から、アパートに向かって歩く。
心の中は、祐君と「また、デートゲット!」で盛り上がる。
帰りは、イタリア料理、それも「フィレンツェ料理を探そう!」とまで、進んだ。
・・・が・・・
アパートの前に、明太子女が・・・いた。(マジに邪魔!)(顔には出さんけど)
・・・その後は、「入学式おめでとう」の話から、ついつい雑談(私も、お人よしやから・・・明太子女も祐君を涙目で見とるし)
結局、いつもの三人で、「メディチ家の至宝」展を見に行くことになったのである。