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隣の祐君第19話純子と祐の夜桜甘酒デート

私に指をからめられた祐君は、実に可愛い表情だ。
少し頬を赤らめて、「あの・・・」とモジモジする。
こういうことに慣れていないの?と、ますます可愛いし、そのまま食べたい!と思うけれど、自重する。

それでも、甘酒を言い出したのは私。
「お部屋で?ここで?」と祐君に聞いてみた。

祐君は、そこで少し考えた。
「お部屋に入るのも、時間が遅い」

(私は、部屋に入ってもらっても、と思ったけれど、私の抑えが効かなくなる不安もある)

そして祐君は、はにかんだ顔で、可愛い声。
「あそこの桜の木の下でお待ちします」
(私は、この言葉にもドキン・・・なんて風情のある子なの?)

何しろ粉末の甘酒なので、出来るのも、すぐ。

マグカップに並々と入れ、私はアパートの庭にある桜の木の下に。
「祐君、出来たよ」
「インスタントだけど」も念のため、つけ加える。

祐君は、やさしい笑顔。
「ありがとうございます」
私は、そのやさしい笑顔に、また胸がキュン。
遠慮はしない、身体を寄せてしまう。
「寒いから」と小声で理由もつける。

祐君は、拒まなかった。
それどころか、お礼まで言ってくれる。
「純子さん、寒いから、うれしいです」
私は、思わず聞き返す。
「甘酒?それとも?」

祐君は、また顔を赤く染めた。
「純子さん・・・そして甘酒かな」

私の心は、この言葉の瞬間・・・「祐君に完落ち」した。
「いいなあ・・・祐君」
「可愛いし・・・桜の木の下で、甘酒をご一緒」
「肌寒い中で、美しく暖かい時間」

風に舞った桜の花びらが、祐君の髪や私の髪に落ちる。
でも、祐君も私も取り除けたりはしない。
少し風が強くなって、甘酒にも落ちる。(風情だなあと、これも感動)
でも、何も寒くない。
(祐君としっかり身を寄せているし)

黙っていた祐君が口を開いた。
「飲み終えたら、部屋に戻りましょう」
私は、「うん」と小声。
ついでに、また身体を寄せる。(当たっているけれど、祐君から離れたくない)

飲み終えて一緒に歩き出す。
祐君は顔が赤い。
でも、何も言わない。
(私もピッタリ過ぎて恥ずかしくて、何も言えない)

部屋の前には、あっという間についてしまった。(泣きたいほどあっという間)
祐君は、ふんわりとした笑顔。
「ごちそうさまでした、美味しかった」
少し間があった。
「純子さん」
祐君としっかり目が合った。

私は、心臓がキュンキュンとなる。
「うん・・・」が精一杯。
(ムギュってしてくれるの?それとも?いきなり?)

祐君は笑った。
そして、予想外の言葉。

「おやすみなさい」

私は、ここでも噛んだ。
「あ・・・え・・・おやすみなさい」

次の瞬間、祐君の姿は、祐君の部屋に消えた。(当たり前!)

しかたなしに私も、自分の部屋。
ベッドに寝転ぶけれど、心も身体も、今まで感じたことのない「フワフワ感」
心も身体も混乱の限りになった。

「生殺し?ムギュ・・・なかった・・・早過ぎ?」
「それとも祐君は何も思っていない?鈍感?」
「でもいい感じ・・・私から逃げなかったし」

そんなことで、純子は、なかなか眠りにつけなかった。

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