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土佐日記 第40話 二十日、②

(滞在地)室津

(原文)
二十日の夜の月出でにけり。
山の端(は)もなくて海の中よりぞ出(い)で来る。
かうやうなるを見てや、むかし阿部の仲麻呂と言ひける人は、唐土(もろこし)に渡りて、帰り来にける時に、船に乘るべき所にて、かの国人、馬(むま)の餞(はなむけ)し、別れ惜しみて、かしこの漢詩(からうた)作りなどしける。
飽かずやありけむ、二十日の夜の月出づるまでぞありける。

(舞夢訳)
二十日の夜は、月が出ました。
山の端などは無いので、海の中から出て来ました。
この風情あふれる月を見たからでしょうか。(故事を思い出しました)
その昔、阿部の仲麻呂という人が、唐の国に渡って、そして帰国の途につく際に、その船に乗るべき場所で、唐の国の人が、送別会を開いてくれて、別れを惜しみ、いろいろとお互いに漢詩を詠みあったとのことです。
(詩作が、とても面白くて)飽きることもなく、二十日の月が出るまで続いたそうです。

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