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土佐日記 十三日、②

(滞在地)室津

(原文)
さて、十日あまりなれば月おもしろし。
船に乘りはじめし日より、船には紅濃くよき衣着ず。
それは、「海の神に怖ぢて」といひて、何の葦蔭にことづけて、ほやのつまの胎具鮨(いずし)、鮨鮑(すしあはび)をぞ、心にもあらぬ脛(はぎ)にあげて見せける。

※船には紅濃くよき衣着ず
 当時、海の神は、派手な色を好むとの俗信があった。
※「海の神に怖ぢて」
 上記俗信に関係し、海の神は、姿の美しい女性を海中に引き込むと、信じられていた。
※何の葦蔭
 「葦(あし)」と「悪(あ)し」を掛けてある。
「どうということもない、葦は生えている影」と、「何も悪いことなどしていない(何も気にすることはない)と掛けている。
※ことづけて
 かこつけて
※ほやのつまの胎具鮨(いずし)、鮨鮑(すしあはび)
 男性器と女性器の隠語。

(舞夢訳)
さて、十日を過ぎているので、月は(満月に近く)、実に美しいのです。
船に乗り始めた日から、紅色の濃い派手な着物を着ることは、ありません。
その理由は、基本的には「海の神を怖れて」なのですが、それでも、そこらへんの葦影で、水浴びをしています。
「海の神を怖れて」も、実は気にしていないのか、裾をめくりあげて、ほやのつまの胎具鮨(いずし)、鮨鮑(すしあはび)(男性は男性器を、女性は女性器)も露わに、(月や海の神に)見せつけているのでした。

千年以上前の俗信と性風俗になる。
実際、性器を露出しただけなのか、それ以上なのかは、確認できない。
いずれにせよ、現代人の性倫理は、通用しない。

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