伝道者の書第59話彼は母の胎から出てきたように、

(原文:第5章15、16、17)
15 彼は母の胎から出てきたように、すなわち裸で出てきたように帰って行く。彼はその労苦によって得た何物をもその手に携え行くことができない。

16  人は全くその来たように、また去って行かなければならない。これもまた悲しむべき悪である。風のために労する者になんの益があるか。

人は何も持たず、この世に誕生する。
そして、また何も持たず、この世を去る。
どんなに苦労して獲得したものであっても、その手には持てない。
人は、何も持たず生まれ、何も持たず死んでいく。
これもまた悲しむべきことで痛ましいこと。
永遠の命を持たない人間には、永遠の価値あるものは、持ちようがない。
それなのに、空虚なもののために、人は空しい労苦を重ねていく。

「宝は心に積むべし」
「人はパンのみにて生きるにあらず、神の口から出る一つ一つの言葉で生きる」

伝道者は、財産形成を否定しているわけではない。
財産形成は、生きるための必要な手段であるし、それが出来なければ、盗賊になるしかない、あるいは惨めに滅びるしかない。
伝道者が戒めるのは、財産形成のためだけ、あるいは財産形成を至上目的として生きること。
財産形成は、生きるための一つの手段に過ぎず、それだけで、心の幸福が得られる訳ではないのである。

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