伝道者の書第14話心は知恵をもってわたしを導いているが

(原文:第2章3~11)
心は知恵をもってわたしを導いているが、わたしは酒をもって自分の 肉体を元気づけようと試みた。

また、人の子は天が下でその短い一生の間、どんな事をしたら良いかを、見きわめるまでは、愚かな事をしようと試みた。

わたしは大きな事業をした。
わたしは自分のために家を建て、ぶどう畑を設け、園と庭をつくり、またすべて実のなる木をそこに植え、池をつくって、木のおい茂る林に、そこから水を注がせた。

わたしは男女の奴隷を買った。またわたしの家で生れた奴隷を持っていた。
わたしはまた、わたしより先にエルサレムにいただれよりも多くの牛や羊の財産を持っていた。

わたしはまた銀と金を集め、王たちと国々の財宝を集めた。
またわたしは歌うたう男、歌うたう女を得た。
また人の子の楽しみとするそばめを多く得た。

こうして、わたしは大いなる者となり、わたしより先にエルサレムにいたすべての者よりも、大いなる者となった。
わたしの知恵もまた、わたしを離れなかった。
なんでもわたしの目の好むものは遠慮せず、わたしの心の喜ぶものは拒まなかった。
わたしの心がわたしのすべての労苦によって、快楽を得たからである。
そしてこれはわたしのすべての労苦によって得た報いであった。

そこで、わたしはわが手のなしたすべての事、およびそれをなすに要した労苦を顧みたとき、見よ、皆、空であって、風を捕えるようなものであった。
日の下には益となるものはないのである。

酒を飲み、身体を元気づける。
人間の短い人生で、いったい何をしたらよいのか、それがわかるまでは知恵者ぶらず、愚かなこともしてみようと思った。
つまり、酒に依存するような生活をはじめとして、知恵者からは考えられないような、遊びや享楽にふける生活を試したのだろうか。
また、財力をいかして、大邸宅や様々な実のなる農園やら池、森までつくる。
男女の奴隷を買い、また自分の家で生まれた奴隷も使い、牛や馬の財産ははかり知れなく増加した。
金銀財宝、国土の拡張にも成功。
男女の歌手、側室も地位と力と財力にものを言わせ、かき集める。
結果として、エルサレムにおいては、前代未聞の実力者、富貴者となった。

「わたしの知恵もまた、私を離れなかった」とは、正気を離れなかったの意味。
つまり、それほどの成功をおさめたソロモン王は、成功の快楽では、満足すること、つまり心の平安がなかった、「どこかがおかしい」という知恵が離れなかったのだと思う。

ソロモン王は、全て欲しいと思ったものは遠慮せず、わたしの心の喜ぶと思ったものは手に入れた。
そして、そのすべてが自分が苦労をして得た快楽であり、結果であること確認した。

しかし、ソロモン王は嘆く。
すべての豊かさと、それらを獲得するために要した労苦を考え直した。
そして、得られた結論は、全てが空しい。
風を追うように実体がない、何も喜びとして、残らない。

物質の豊かさから得られる快楽は一時的なもの。
美味しいワインを口に含んでも、美味しさはその時限りで、身体に永遠に残るわけでない。
金銀財宝、多大な領地や権力、奴隷、側女、牛馬もしかり、やがては過ぎ去る一時の快楽、手に入れる労苦や犠牲は多大なもの。

しかし、あくまでもそれは、一時の快楽、消え去れば空しいだけ。

「物質的な快楽では、何故、満足できないのか、何故空しいのか」
この問題は、ソロモン王から発せられた問題。
ソロモン王の嘆きを参考に、それぞれの人間が教えられるべきではなく、自ら考えるべき問題なのだと思う。

※原文の文脈を読みやすく、つなげました。

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