笠女郎が家持に寄せる歌(16)伊勢の海の 磯もとどろに 寄する波

伊勢の海の 磯もとどろに 寄する波 畏き人に 恋ひわたるかも
                        (万葉集巻4-600)

伊勢の海の磯に激しく音立てて寄せる波、そんな身が震えるほどの高貴なお人に私は恋し続けているのです。

笠女郎に対し、大伴家持は由緒ある大貴族の御曹司。
笠女郎は、はるかな身分の違いを、ようやく悟り始めたのだろうか。
また、伊勢の海の磯に激しく音立てて寄せる波には、世間の噂のやかましさを込めているのだろうか。
大伴家持は、軽い遊びで、笠女郎に接したのかもしれないけれど、笠女郎はその後の逢瀬もかなわず、ただ辛いだけの状態が続く。

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