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笠女郎が家持に寄せる歌(17)心ゆも 我は思はず 山川も

心ゆも 我は思はず 山川も 隔たらなくに かく恋ひけむとは
                       (巻4-601)

こんなことになるとは、思いもかけませんでした。
山川が隔てているわけでもないのに、これほど恋しく思うとは。

笠女郎が明日香の里から家持のいる平城京に出て来ていた頃のものらしい。
彼女としては、平城京に出てくれば、家持に逢えるとの期待を持っていたのだと思う。
しかし、そんな簡単なことではなく、逢うことはできなかった。
たかまるのは、逢えないもどかしさと、苦しい恋の思いだけ。

「まさか、ここまで、つれないお方とは・・・」
落胆しながらも、恋し続ける笠女郎の涙が哀しい。

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