土佐日記 第62話 五日、①
(行程)難波津
(原文)
五日、今日、辛(から)くして和泉の灘より小津の泊(とまり)を追ふ。
松原、目もはるばるなり。
これかれ、苦しければ詠める歌、
「ゆけどなほ 行きやられぬは 妹(いも)がうむ 小津の浦なる 岸の松原」
※からくして
ようやく。
※小津の泊(とまり)
大阪府(和泉国)泉大津市。
※妹(いも)がうむ
「妹」がつむぐ「麻」の意味から、「小津」にかかる枕詞。
「うむ」は、麻、糸を合わせて、よる。
(舞夢訳)
五日になりました。
今日は、ようやく、和泉の灘から、小津の泊に向けて、船が進みます。
美しい松原が、どこまでも、見渡す限り、遥かに続いています。
誰でしょうか。
長旅の辛さを思い、歌を詠みました。
行けども行けども、なかなか、到着しません。
この小津の浦に、果てしなく続く、岸の松原のようです。