笠女郎が大伴家持に寄せる歌(24)心ゆも 我は思はずき また更に
心ゆも 我は思はずき また更に わが故郷に 帰り来むとは
(巻4-609)
全く考えてはいませんでした。
いまさら、再び、故郷に帰って来るとは。
大伴家持との恋に破れた笠女郎は、平城京から故郷の飛鳥に戻るしかなかった。
逢瀬を夢見て、平城京にのぼった時には、そんな失恋など思いもしなかった。
しかし、どれだけ逢瀬を夢見ても、何の音沙汰もない。
家持の心は、自分には向かないと悟った時点で、平城京にいることなどは来るしむだけ。
かくして、故郷に戻るしかなかった。
恋に破れた笠女郎の目に、故郷飛鳥の風景は、涙でかすんで見えなかったかもしれない。