伝道者の書第18話そこで、わたしは生きることをいとった。
(原文:第2章17)
そこで、わたしは生きることをいとった。日の下に行われるわざは、わたしに悪しく見えたからである。皆空であって、風を捕えるようである。
ソロモン王は、様々な事例研究の結果、生きることに絶望してしまい、生きることそのものを憎んだ。
この地上世界で、行われる全ての事例が、ソロモン王にとって、悪しきもの、災難であるようなものとなった。
全て、空虚であって、風を捕らえるようなものであったと語る。
本当に凄まじいほどの、落胆の告白である。
知識、財産、権力、およそ人が望む最高のもの獲得し続けたソロモン王の落胆の告白なのである。
それは、何故、このような告白になったのだろうか。
確かにソロモン王は、人として望みうる最高のもの獲得した。
しかし、自分以外の他者、世界を見た時に、悲惨な事例、悪しき事例があふれていたのではないだろうか。
ソロモン王とまでいかなくても、自らの無力感に苛まれ、世を厭うことはある。
自分の力では、もはやどうにもならない事態が発生し、その結果として、自分が滅びていくしかないと悟った場合、人は空しさ、虚しさを感じないではいられない。
そして、全てやがては滅びる運命を持つ人間は、この空しさと虚しさから、逃れることができないのが摂理。
悲しき事例、悪しき事例の絶えた事はない。
他者に、危害を加え、自らを富ます輩の、なんと多いことか。