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二人妻(2)(堤中納言物語から)

男は懸命に昔からの女を探し歩いた。
なかなか見つからなかったけれど、既に平城京を離れ、明日香の里にいるらしいとの噂が耳に入った。

男は、居ても立っても居られず、仕事の休みをもらい、昔の女の住む明日香に出向いた。

「ここか・・・」
家というのには、あまりにも、みすぼらしい。
ただ、雨風がしのげる程度に過ぎない。

「戻っておくれ」
男は、心の底から懇願した。
何より女が自分の前から姿を消すことが、寂しくて仕方がない。

しかし、女は首を縦に振らない。
「いえいえ、その御心だけで、十分でございます」
「今まで、おそばにおいていただいただけでも、ありがたいことで」
「せっかくの御縁を無駄になさらぬように」
「貴方様のご出世の噂だけを楽しみに、これからは生きてまいります」

男が何度懇願しても、言葉を変えない。
男も何日も仕事を休むわけにはいかない。
「また、必ず、ここに迎えに来る」とだけ言いおき、都に戻る他はなかった。

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