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恐ろしい受付嬢(8)

超一流企業の会長理事、社長理事、専務理事が一様に彼女の名前で顔を曇らせるのだから、何かがあった、それも彼女にとってよからぬことがあったのだと判断した。

それでも専務理事が話しだす。
「はい、昨日の先生のご訪問の際のビデオを、私達三人で確認をいたしました」
「本当に誠に失礼極まる態度、それにあってはならないミスもある」
「わざわざお呼びした先生には、本当に申し訳ないということになり」
専務理事は、一旦会長理事と社長理事の頷く顔を見て
「彼女には懲戒処分、今は自宅謹慎を命じております」
「当分の間、出勤停止です」
「その後は、接客業務のない部署に配置転換をします」

その話を聞いて、さすがに厳しい企業と思う。
その厳しさがあったから、ここまでの一流企業となったと理解する。
しかし、その処分が自分が発端なのが、どうにも気にかかる。
ほとんど「仏心」を持つ性格ではないけれど、自分自身も「研究者であり、教育者」の端くれでもある。

専務理事に尋ねてみる。
「私の時の接客は別にして、他の来客にはどうだったのですか」

専務理事は
「はい、几帳面か、几帳面すぎるほどの仕事ぶりでした」
「ある意味、杓子定規で、融通がきかないところがあります」
「仕事そのものは、丁寧です」
社長理事も会長理事も、専務理事の評価に頷く。

ほぼ、自分の彼女に対する評価と同じだった。

「わかりました、御社の内部統制にも属しますので、これ以上はコメントもしづらいのですが」
自分としては、これ以上コメントをすることをためらったけれど、どうにも彼女の涙顔が目に浮かんできてしまった。

そして
「もう一度、彼女とゆっくり話をしてみたいのですが」
「彼女にも、心の傷を負わせたままでは・・・」
自分でも「仏すぎるかな」と思ったけれど、話してしまった。

目の前の三人のお偉方は、顔を見合わせている。

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