笠女郎が家持に寄せる歌(5)白鳥の 飛羽山松の 待ちつつそ

白鳥の 飛羽山松の 待ちつつそ 我が恋ひわたる この月ごろを
                        (巻4-588)
※白鳥の:飛羽山にかかる枕詞。
※飛羽山:未詳。奈良東大寺北方の山、あるいは福井県鯖江市の鳥羽付近の山とする説などがある。
※「飛羽山松の」までが「待ち」を導く序詞。

白鳥の飛ぶ飛羽山の松のように、貴方のおいでを待ちつづけ、私はずっと慕いつづけているのです、この何か月も。

山を高々と飛ぶ白鳥を眺めつつ、愛しい人の訪れを待ち続ける。
それも何か月も、ずっと・・・

逢えない事情があったのだろうか。
遠隔地恋愛か、家持の心がはっきりとしないのか、あるいは家持にとってはそもそも戯れの恋だったのか。
白鳥を家持として見たのだろうか、あちこちの女性のところを飛びまわっている、だから、これほど長い月日、恋い慕い続けても、私のところには来ない。
これも、待つだけの女性の辛い気持ちが、白鳥と松という言葉を使い、美しく表現されている名歌と思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?