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土佐日記 第29話 十三日 ①

(滞在地)室津

(原文)
十三日の暁(あかつき)にいささかに雨降る。
しばしありて止みぬ。
女これかれ、浴(ゆあみ)などせむとて、あたりのよろしき所に下りて行く。
海を見やれば、
「雲もみな 波とぞ見ゆる 海人がな いづれか海と 問ひて知るべく」
となむ歌よめる。

※浴(ゆあみ)
 水浴び

(舞夢訳)
十三日の明け方に、雨が少々降りました。
しばらくして、止みました。
女性や子供たちが、水浴びをしたいとのことで、それぞれ適当な場所を求めて、船を下りて行きます。
主人(紀貫之)は、海を眺め、

はるか遠くの雲であっても、全て波に見えてしまう。
海人(あま)はどこにいるのだろうか。
どこまでが海なのか、聞いて知りたいと思うので。

と、詠みました。

夜明け前の空に、低く雲が漂っていて、太陽の光は、まだわずか。
少しだけ月の光が残っているが、水平線の判別はつかない。
都人の紀貫之にとっては、珍しい海浜の風景なのだろう。

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