土佐日記 第78話 十五日、
(滞在地)山崎の知人の館
(原文)
十五日、今日車率(い)てきたり。
船のむつかしさに、船より人の家に移る。
この人の家、喜べるやうにて饗したり。
この主人(あるじ)の、また饗のよきを見るに、うたて思ほゆ。
いろいろに返り事す。
家の人の出で入り、にくげならず、ゐややかなり。
(舞夢訳)
十五日になりました。
今日、車が京の都から、来ました。
船の上の生活では「お苦しいでしょう」と、(現地の知人が気を配っていただいたので)船から、その人のお屋敷に、移りました。
(移った)知人のお屋敷では、たいそうお喜びになり、大宴会となりました。
ただし、このお屋敷のご主人のお喜びようと、宴会の派手さに、実は下心でもあるのではないか、とも思いました。
お礼の気持ちとして、様々なお返しを渡しました。
そのお屋敷の人たちの、立ち居振る舞いは、醜くはなく、作法通りです。