維摩VS文殊菩薩(11)
なかなか維摩の教えが理解できない文殊菩薩は重ねて質問をする。
「維摩さん、地大、水大、火大、風大のなかで、どこが病なのですか?」
※地大、水大、火大、風大:万物を構成する四大要素。
維摩は答えた。
「地火水風のどれか一つを特定して病んでいるのでありません」
「衆生の病は、その四大要素が調和を欠くところから生じるのです」
人の身体も心も、どこかに不安があれば、当然調和を欠く。
その総称が、病とも言える。
ただし、理解ができない文殊菩薩は、あくまでも具体的な痛む個別の箇所について質問した。
地火水風と言いながら、胸の病、頭の病、脚の病、内臓の病など特定して、維摩に答えるよう求めたのである。
「その病む場所だけを治療すれば、楽になるというものではない」
維摩の答えは、文殊菩薩の質問よりも、よほど深い思いから発せられている。