笠女郎が家持に寄せる歌(10)君に恋ひ いたもすべなみ 奈良山の
君に恋ひ いたもすべなみ 奈良山の 小松が下に 立ち嘆くかも
(巻4-593)
貴方が恋しくてどうしようもなくて、奈良山の松の木の下に立って嘆いてます。
奈良山は、奈良市北郊の丘陵地。
そこからは、愛しい家持の邸のある、佐保の里を眺めることができた。
笠女郎は、もしかして姿くらいは見えるかもしれないと思い、松の木の下に立った。
しかし、姿が見えたのだろうか、見えなかったのだろうか、どちらにせよ逢うことのない片思い状態。
家持が笠女郎のいる松の木にまで来ることはなく、ただ立ち嘆くばかり。