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アレハンドロ・ホドロフスキー監督「エンドレス・ポエトリー」氾濫するイメージ
御年89歳のアレハンドロ・ホドロフスキーが88歳で監督した作品。もう何と言っていいかわからないほど圧倒されてしまった。前作「リアリティのダンス」の続編で監督自身の自伝的な物語。やはり家族総出(今回は次男アクセルが関わっていないのがちょっぴり気になるのだけれど・・)の大作だ。
主役であるアレハンドロを演じるのは前作の子役イェレミアス・ハースコヴィッツと、四男アダン。アダンはもちろん音楽も担当。同じく前作に続き父親は長男ブロンティス、母親はパメラ・フローレンスだ。
パメラは今回まったく対照的な二役で出演していたので驚いた。横暴な夫に従順な妻(今回も台詞はすべてオペラ調に歌う)と詩人のステラ(若き日のホドロフスキー監督にとってミューズのような女性)
画像が小さいから分かりにくいけど。ステラはオペラじゃなくて普通に話す。いや普通ではないかもしれない・・。このルックス、豊満なバディもアーテイステイックなオブジェに見える。
この映画の存在そのものがアートであり、どのシーンのどの舞台設定も芸術的でエネルギッシュでスピリチュアル!
これぞアレハンドロ・ホドロフスキー監督!
グザヴィエ・ドラン監督どころか、更に好き嫌いが分かれる気がする。でもわたしは感動で心臓がどっくんどっくんするくらいホドロフスキー監督の作品が好きだ。
好ましいことに無修正だから、全裸とか当たり前のように出てくるけど、とても自然で淫靡な雰囲気はかけらもない。人間が生きるということを肯定しているのだ。さすがの88歳!ドラン監督の若くて繊細で危うい苦悩なんぞ吹っ飛ばされてしまいそう・・
ドッカ~ン!
でもやっぱりドラン監督も好き(笑)
さて、鑑賞してから一週間経った。心に残っていること( ..)φメモメモ
★「自分の心に正直に」「自分の心の声に従って」みたいなことを従弟のリカルドがアレハンドロに言う。リカルドはゲイだった。そして入学した大学の前で自殺してしまった。リカルドの言葉はアレハンドロを救ったというのに・・・。悲しかった。
★「何のために生きるの」という若きアレハンドロに老アレハンドロが語る「生きる」「ただ生きることだ」。いやあ、その通りなんだね、やっぱり。88歳が語るとものすごく重みがある。
★ハーケンクロイツ旗がずらり並び、チリ軍事政権のアウグスト・ピノチェト大統領らしき軍人(名前が違ったような気がするけど)が馬に乗り、兵を従えて行進していく。その前に立ちはだかるアレハンドロ。隊列はアレハンドロを迂回して進む。これは面白い!
ハーケンクロイツにはぞわっとするが、アレハンドロも嫌悪感を抱いていたのだろう。
★専制君主みたいな父親、保守的な母親と決別してアレハンドロはパリへと旅立つ。その別れ方がアレハンドロにとって心残りだったのだろう。「そうじゃない」と愛と赦しに満ちたシーンへと変える(本人が介入するという形式)
ここは泣けてしまった。
★音楽はやはり素晴らしい!民族音楽っぽい調べに合わせてお祭りみたい行列が行く♪
骸骨の扮装♪馬も骸骨♬・・・このシーンは好きで好きでたまらない!
途中で気が付いたのは、アダンが作曲した曲だけでなくシベリウスが聞こえてきたこと。久しぶりに聴きたくなった。