かたつむり的世界観 第3回「かたつむりとなめくじって、どう違うの?」
人からよく聞かれる質問の1つです。
簡単に答えるとすれば、かたつむりもなめくじも同じ仲間で、単に殻をもっているかいないかの違いです。
ただ、詳しく説明するとなると、事情は複雑です。
そもそも「かたつむり」自体、生物学的な定義のある言葉ではありません。
軟体動物(貝のなかま)のうち、陸上に棲むものを「かたつむり」と呼ぶことが多いです。ただ、それだけだとあまりに広すぎるため「柄眼目」などの一定の分類群だけを「かたつむり」と呼ぶという人もいます。
そして、これらの定義だと「なめくじ」も「かたつむり」に含まれてしまうことになりますが、一般的には「なめくじ」は「かたつむり」に含まれません。
しかし、生物の系統としては「なめくじ」は「かたつむり」の仲間の一部で、しかも「かたつむり」の仲間のたくさんの枝分かれのうち、いくつかバラバラに「なめくじ」の仲間がいるというのです。
「うーん、ややこしい! よくわからん!」
まぁ、そうですよね。
つまりは、かたつむりの長い進化の歴史の中で、一度だけでなく、何度か殻をなくす方向への変化が起きているということ。
このように殻をなくすという進化は、実は貝類としては珍しいことではありません。専門的には「ナメクジ化」と呼ぶ、しばしば起こる現象です。
例えば、イカやタコはオウム貝の仲間がナメクジ化した生物。同様に、アメフラシやウミウシ、クリオネも巻き貝の仲間がナメクジ化した生物です。
「ナメクジ化」にはいくつかのメリットがあります。
殻が不要なので、カルシウムの摂取量が少なく済み、さらに身体が軽くなります。つまり、省エネ、低コスト。大きな殻は移動の障害にもなりがちですが、ナメクジ化すると狭い隙間にも入り込めるようになります。
かたつむりにとっては大事な殻も、思い切ってなくしてしまうことで大きなメリットがあるなんて、生き物って不思議です。
もしかしたら人も、ナメクジ化すると何かメリットがあるのかもしれません。
ん? 人にとっての「殻」って、いったいなんでしょう。
家? お金? 肩書き? それとも……?
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コラム「かたつむり的世界観」は、特定非営利活動法人グリーンシティ福岡のメルマガ・コラムに連載中です。
以上は、その記事の第3回(2018年8月)の記事の転載(一部改変)です。
★おまけ
ナメクジに貝殻を乗せてみました。