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まち歩き団体が「建築祭」に関わる理由【まいまい京都のめざすもの⑤】

世間を賑わす「建築祭」とは

近年、全国各地で建築イベントが盛り上がっている。大阪、福岡、広島、愛知。
そんななか、2022年は「京都モダン建築祭」が初開催され、2023年には「神戸モダン建築祭」がスタート。そして、2024年5月25日〜25日には、ついに東京へ。いままさに東京建築祭」の実現に向けたクラウドファンディングが実施されていて、すでにたくさんの支援や応援が集まっている(2023/5/8まで)。

これらの建築祭は、建物の一斉公開イベントだ。ある期間、ふだんは公開されていない建物を一般公開したり、建築をより深く楽しむためのガイドツアーを開催したりしている。2023年11月の京都モダン建築祭では、のべ4.9万人の来場者が京都中の建築を楽しんだ。

まち歩きと建築祭の“意外”な共通点

まいまい京都/東京は、京都・神戸・東京の建築祭の実行委員および事務局として深く関わり、イベントの立ち上げから運営までを担ってきた。私たちは、まち歩きツアーを主催する団体だ。どうして、まち歩き団体が建築イベントに関わっているのか、その理由をお話したい。

ひとことでいえば、まち歩き事業も建築祭の運営も「愛情の伝播を事業化する」という根幹が同じなのだ。まち歩きは、偏愛をもつガイドさんから、2時間で20名がそのまちの楽しみ方を共有してもらうもの。深く、愛情の伝播がおこる。建築祭では、その深い愛情の伝播が広く起こるのだ。数日にわたって数万人が、建築やまちへの好奇心を共有する。ガイドさんや専門家がもっている楽しみ方を多くの人に届け、いっしょに楽しむという意味では、まち歩きも建築祭も同じなのだ。

エリア制・パスポート制は、街並みごと味わってもらうために

そんな思いは、建築祭の仕組みにも反映されている。まずエリアのまとまりをもって公開していること。参加者は次々と数珠つなぎに周遊していける。歩いて楽しい設計にしている。

加えて、京都や神戸で導入している「パスポート制」もそうだ。参加者は、パスポートを購入することで、特別公開している建物を自由に楽しむことができる。30〜50件ほどの建物を一斉に公開するのだから、建物それぞれに入場料を支払うという方法も選択肢としてはあった。しかし、私たちはそうしなかった。

なぜならば、お目当ての建築を見るだけでなく、まちをうろうろしてほしかったからだ。建物は、その街に脈絡なく生まれてきたわけではない。地形や歴史、そこに住む人、そこで働く人たちの必然があって、その場にあるものだ。建築とまちを切り離さずに、街並みごと味わってほしい。そんな思いで、エリア制やパスポート制を選んだ。

オーディオガイドは愛情を実感してもらうために

また、各建築に「オーディオガイド」を用意したのも工夫だ。建築祭に、かならずしもオーディオガイドはなくてもいい。解説資料があれば十分かもしれない。けれど、私たちは、まち歩きの現場でガイドさんの情熱を伝えてもらうことを重視している。だから、建築祭でもパスポートをもつ来場者一人ひとりが、その建物への愛情の向け方を実感してもらいたかった。

建築祭のオーディオガイドは、決められた原稿をナレーターが読み上げる音声ガイドとは違う。一発録りで、建築をこよなく愛する専門家に「この建物の見どころは?」と尋ね、目の前のツアー参加者さんに話しているような言葉を生で収録した。来場者の反応も上々で、「ライブ感のある音声ガイドが新鮮だった」「素人で何も調べずに行っても楽しめた」という声がいくつもあがってきた。

専門家の知識と一般の好奇心をつなげていく

建築祭に関わる人に言われたことがある。まいまい京都が発足以来、13年間やってきたことは「専門家の知識と一般の好奇心をつなげること」ですね、と。そのとおりなのだ。高尚だと思われがちだった「建築」という領域でも、その楽しみ方を一般の人たちにおおいに伝えていきたい。それこそが、私たちが建築祭に関わる意義だ。

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