見出し画像

コートに入る前の一礼 バスケ河村選手

河村選手ファンは当然よく知っている話だが、彼は、試合前に、深く一礼をしてからコートに入る。軽く一礼をする選手なら他にもいるだろう。
だが、私が驚いたのは、その礼の深さと長さだった。

改めて考えてほしいのだけれど、デパートや高級店の店員以外で、ここまで深く礼をすることが日常においてあるだろうか。筆者は、5~30度くらいならいつもへこへこお辞儀をしているけれど、90度より深く礼をしたことは、人生でも1,2度しかない気がする。

そしてこの長さ。このタイトル写真を撮影した有明アリーナでの日本代表戦。河村選手は、90度より深い礼をしながら3秒は頭を下げたままだった。人が礼をする姿はなんて美しいんだろうと思った。誠心誠意を込めた想いが身体全体から伝わってくる。

「コートに立ちたくても立てない選手だったり、今自分がこうやってコートに立っていることは当たり前じゃないというところを、試合に入る前に、コートに入る前に再認識するために、コートに入る前は一礼をして、全力で戦うということを誓って入っています」

河村勇輝「礼儀正しい」深々一礼でコートイン そのワケは?(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース

自信がある人しか、このような深い長い礼はできないと思う。たくさんの人の前でコートに立てている、家族や恩師、チームメイトやファン、その他かかわってきた多くの人たちのおかげで今の自分があり、コートに立ちたくても立てない選手の思いも背負って全力で戦う。そう心の底から思っているからこそできる「一礼」なのだろう。

2019年の専門雑誌の取材で、当時高校生だった河村選手は「自分のためだけでなく、周りの人たちのために戦う」と言っている。「悔しさをバネにがんばる」と言う選手は多いだろう。けれど河村選手は、一般的には親への感謝を言うのも照れくさいとされる年齢の高校生で、家族やチームメイト、そして、自身の学校が勝ったためにインターハイに出られなかった相手校の分も戦うと言ったのだった。(月刊バスケットボール9月号、日本文化出版、2019、p24)

河村選手は時折、インタビューの中で「自分はそんなに強くない」と言う。3人姉弟の末っ子の河村選手、素の顔は、もしかしたらそんなに強くないのかもしれない。けれど自分を応援して、支えてくれる人の想いを背負うことで、何倍も、何十倍も、そして日本中、もしかしたら世界のファンの応援をのせたら何千倍、何万倍・・・もの力が発揮されるのだろう。そういう努力ができる人なのだろう。

河村勇輝になりたい人はたくさんいるだろう。恥ずかしながら筆者もその一人だ。そして「恥ずかしながら」と言ってしまうあたりが、大いなる河村選手との距離をよけい感じさせてしまう。わたしも、自分を支えてくれる人に1ミリの疑いもなく感謝し、自分が好きで情熱を燃やせることに一心に努力する、決しておごらず、でも必要以上に謙遜しすぎない、そんな生き方がしたいと、照れないで言えるようになりたい。


いいなと思ったら応援しよう!