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【カイロウドウケツ】

私はカイロウドウケツだ。
深い深い海の底で
「〜だったらどうする?」
「〜だった時はこうしよう」と
まだ自分の身に起きてもいない事を
ぼんやりといつも考えている。

今日は何を考えようかと下を向いた時
気付けば近くに1匹のエビが居た。
自分とは全く異なる生き物で
それだけでも面白いのに
話すと全く違う考えを持っていて
私は楽しくてつい質問ばかりしていた。

エビが居ない日は
次は何を質問しようか?
君ならどんな答えをくれるだろうか?と
楽しくてつい考えてしまうのだった。

私は楽しいけど
エビは楽しんでくれているのだろうか?
ふと、そう思った私はエビに問いかけると
エビは「楽しいよ」と答えた。
私はまた嬉しくなって
あれもこれもそれもと欲しくなった。

今日もまたどんなお話をしようかと
考えて待つ時間も私はとても楽しかった。


そんなある日
今日はエビが2匹だった。
仲睦まじい姿は関係を聞かなくたって分かった。

エビはとても楽しそうだった。
胸が少しズキンと痛むけれど
私はそれでも大丈夫だった。
エビが見たことのないやさしい笑顔を
見せていたからだ。

私は声をかけた。
『どうぞ、私の家で休んでって』

エビ達は嬉しそうにしている。
そしてゆっくりとくつろいで休んでいった。

来る日も来る日も声をかけた。
すると住み着くようになった。

エビはいつも幸せそうだった。
そんなエビを見て私も嬉しかった。

沢山、笑うタイプでは無いし
自分を語る事も無い。
だけど沢山の知識と感性をくれるエビの事が
とても好きだった。
もうお話できなくなるぐらいなら
これで良かった。
ここに居るだけで私は安心だった。

だけどもしも、今度生まれ変わる事があるなら
私はドウケツエビに生まれ変わりたいと
願わずにはいれなかった。


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