うちのアフターコロナの方向性と可能性の一つについての考察
2020年頃から、アラフィフのプレ・エイジングパラドックスを考えていた。Havighurst,R.らは,「人間は高齢になってもパーソナリティの変化は無く、活動量と幸福度の間には相関がある」という活動理論を提唱した。これによれば,高齢者においても中年期からの活動性をなんらかの形(社会的なものであるほうがよい)で維持することで,サクセスフルエイジングにつながる。活動量の減少は,幸福度を下げることになるので,可能な限り中年期の活動を保持し,退職などで放棄する場合は,代替となる活動を見つけることが必要だ。
J.E.Marciaは,アイデンティティ・ステイタスについて,危機(自分を方向づける可能性や自己について悩むこと)と積極的関与(職業や思想、趣味といった自分の関心事や問題などについて考えを表明したり,自身の思想に基づいて行動したりすること)の有無によって4つの状態に分類した。これによれば,私の場合,もともと家業(私で4代目)がある時点でアイデンティティ・ステイタスは「早期完了(人生の割と早い時点で方向づけされている)」に近い状態にあった。しかし,自分の興味関心との一致がうまくかなわないことによる葛藤が生じ,一時的な「モラトリアム(いくつかの選択肢に迷い、決定を先延ばしにする)」状態を経験したのち,30代で覚悟を,つまり腹をくくったと言える。
そして今,アラフィフを迎えたこと,IT化,少子高齢化,教育制度の変化等による社会の価値観の急激な変化を経験していること,さらにコロナで世界事情の変化が加速したことにより,私は3回目のアイデンティティ・ステイタスに突入しているのかも知れない。
私の3回目のアイデンティティ・ステイタスである「同一性達成」は,危機が経験されたのち,積極的関与がなされることである。しかしアラフィフはそう単純な年代ではない。これに,高齢期におけるサクセスフルエイジングへの備えという観点を掛け合わせる必要がある。
これまで培ってきた経験の蓄積を社会貢献できる形として生かせる活動は何か?現在の活動量を見直し、持続可能な最適量を身体感覚からはじき出すとすればどれくらいか?そしてなにより自分がワクワクする活動は何か?誰と?
少しだけ、専門的な話をしなければならない。学校規模ポジティブ行動支援(School-Wide Positive Behavior Support ; 以下SWPBS)は,自園のインクルーシブ保育実践をそのままの形で理論づけするのに最適な支援方法である。SWPBSは3層支援モデル(庭山,2020)によって構成される。
第1層支援では,望ましい行動の促進と問題行動予防を目的とし,80%以上の子どもに対して効果的な一般的(ユニバーサル)な行動支援を学校全体で組織的に行う。これはクラス担任による全般的な学級運営に相当する。
第2層支援では,第1層支援が効果的でなかった子ども(全体の約10%から15%)を対象とした小集団支援を行う。これは自由保育時間などを使った小さな集団での遊びの中で,担任や補助教員が,配慮の必要な子どもが他の子どもたちの中でうまくやれるように保育する姿に相当する。
最後に第3層支援では,第1・2層支援で効果が見られない子ども(全体の1%から5%)に対し,より集中的な個別支援を行う。これは担任や補助教員が,その子どもに合わせて個別の支援を行う(例えば絵カードや,見通しを立てた声掛けなど)ことに相当する。
当園では2019年4月から2021年3月に,第1層支援として,子どもの主体性を育み,子どものよい行動に焦点を当てて,認めて ,伸ばすことができる教員を育成するための「幼稚園教諭の全般的保育技術の指標」を作成し,行動スキルトレーニングを行い,指標の有効性を明かにした。
これに続き、私は園内における,子育て相談を含めたペアレントトレーニング(仮)及び配慮の必要なお子さんへのグループ支援を実現させたいとかねてより考えてきた。社会貢献と言う私立幼稚園の目的を果たし,あらゆる多様な子育てを支えるという意義に加え,子育てを終えて保育の現場へ復帰したい教員,クラス運営をするだけの活動量を保持するのは難しいが,配慮の必要なお子さんやそのご家族への支援なら若手以上の実力を発揮できる40代から50代の教員,これまでの教員人生で蓄積した経験の蓄積を何らかの専門性のある形で昇華させたいと欲する教員たちのためにも、是非実現させたいと抱えて来た新しい可能性の一つである。
アフターコロナで、長らく抱え温めてきた卵が羽化する(羽化させる)タイミングがやってきたのではないか。そのためにも、あと1年、準備は計画的に丁寧に行いたい。公認心理師試験にも合格しておきたい。体力も楽しみながらつけていきたい。
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