スモールイズビューティフル再論より
シューマッハーは物質至上主義的な時代が終焉を迎えた今私たちが抱える精神の危機を乗り越えるために必要な観点をおおまかに2つ挙げている。
➀自然に対する新たな態度が必要であり、その態度を庭木の手入れ、園芸や農業の仕事において実践しなくてはならないことを皆が理解すること、②「大きければ大きいほどよい」という考えを意図して捨て去り、物事には適正な限度というものがあり、それを上下に越えると誤りに陥ることを理解しなければならないこと、の2つである。
また、小さいことの素晴らしさとは、人間のスケールの素晴らしさと定義でき、その素晴らしさは、正しいスケールであれば、TLC(tender loving care)の要素を導入できると言う。
そして、(特に貧しい人々を含め)伝統的な価値を守ると同時に、自分の身の丈に合った持続可能な開発の「中道」を発見する様にすすめている。未来を資本やエネルギー多消費型の技術にあずけるのではなく、民衆の力と自分自身の精神と肉体の創造力に頼るように述べている。
シューマッハーの考えを考慮して、今後の研究活動と幼児教育について考えた。これまで、教育学を始めとする研究分野においては、物事や事象をいかに「シンプルに表現する」かが求められていた。例えば相関や回帰は一つの式で表すことを目的にしている。しかし、これからは「そのまま複雑として表現」することに価値がつくべきである。
そうすることで、私たちの生活レベルに科学や技術を落とし込みやすくなるのである。私たちは多くの事例の中から「自分とよく似ている」部分を感じ取り、日常に生かすことができる。これが身の丈に合った「情報社会」との付き合い方なのではないか。
こうして考えてくると、私たちが幼児教育において何をするべきか、その方向性が見えてくる。
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