5年と2年

「地球にいたんだなー」 私は片瀬江ノ島駅から歩いてすぐの、海沿いのコンクリートに腰をかけていた。 夕日が沈んでいく反対から月が光り始めたのを見て、私はずいぶん長いあいだ自分が地球に生きていたことを忘れていたような気がした。 地球にいたことを思い出した私は5年間夢中になって働いた仕事を辞めた。 私はフィルム写真が好きで、たまに撮っては秋葉原のヨドバシへ現像に出す。 コロナのこともあってやっと先日久しぶりにヨドバシへ行き、今年の1〜3月ごろに撮った写真を受け取った。 すぐに見たいので電車を待つホームで中を見て「あたり」があるか目で追っていく。 この瞬間が一番楽しい。トイカプセルのガチャガチャハンドルを「ガチャリコガチャリコ」と回している時と、似たわくわく感がある。 中には片瀬江ノ島の海が写っていた。 そうだ海見に行ったなあと思い出し、はたとその後仕事を辞めたなと気がついた。そこには2年いたか、いないかくらい。 もう少しスマートに生きれないものかと、根性も性格にも難があるのだなあと思う。 でも心を腐らせてまで働きたいとも思わなかった結果だとも思っている。 今回久しぶりの現像でテンションが上がり、いつもはデータ化だけのところをプリントもお願いした。 「あたり」は29枚中5枚もあった。かなりの豊作だ。
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