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ヘルシーなおやつを焼く23時


最近料理を作ることが楽しい。

太ってからは朝昼夜の献立がだいたい決まっていた。平日の5日間は特に。

朝はグラノーラ。
昼は8枚切りの食パンにハムとチーズ、キュウリを挟んで持って行き、
夜は冷奴とプラスなにかのスープを作る。(スープで野菜と肉を摂る)

それが毎日5月ごろからずっと続いていた。
さすがに飽きてきたのと、夜が涼しくなり冷奴は食べる気が失せてきた。


いつも作るスープやサンドイッチはこれまで6年ほど一人暮らしの中で身に染みた味付けばかりなので、これらをアプデしたくなった。
そういえば久しくレシピを見ていない。

仕事の帰り道、レシピアプリのクラシルをダウンロードした。


なんてわかりやすいんだ、クラシル。
そして、おいしい。
ヘルシー&テイスティー。
なんて素敵なアプリなんだ。

仕事帰りの電車の中、クラシルでなにを作るかレシピを漁るのが楽しくなった。

夜、食後にコーヒーを飲むのが習慣なのだが、どうもこの時に何かおつまみが欲しくなる。
コーヒーのつまみは甘い何かである。

ヘルシーなおやつをクラシルで探す。
「ホットケーキミックスと豆腐で作るパンケーキ」
これがいい。材料を買って帰ろう。


最寄りのイオンで豆腐を手に取った時、後ろから声をかけられた。
「ハーワーユー?」

外国人だ。どこの国の人だろう。
ハーワーユーって言われたら何て返すんだっけ?

なんか元気だよーって返す。
「僕この前これ買ったー」
と、外国人は木綿豆腐を指さした。
ニコニコだ。

「僕は隣の駅に住んでるんだよ、ラグビーが趣味でね、イタリアンレストランで働いてたんだけど今はホテルで働いてるの。コロナで大変。ロシアに知り合いがいるの。」

何も聞いてないのにマシンガントークが豆腐売り場の前で止まらない。
日本語と英語が混ざってこんな感じに読み取った。ロシアどっからでてきた。合っているかもわからない。

ははは、と言ってすーっと消えようとしてもついてくる。
「ラインもってないー?」

「ごめん、もってないんだー」

「そっかー、僕チョコ買ってから帰るから。また会えたらいいね!バイバイ」
とチョコ売り場へ消えていった。

豆腐以外に何買うか全くわからなくなった。

そして今23時すぎ。
豆腐入りのパンケーキを焼きながら思う。

私、外国人と老人にしかナンパされたことないな。と。
日本で日本人の男性に適齢期なナンパ体験をしたことがない。

「お嬢さん、なにをやってる人?」
いつだったか駅のホームで見知らぬ爺さまにいきなり問いかけられたことがあったな。
「何もやってないです」と答えて、その答えに対して自分で凹んだな。

上野公園で「お嬢さん、どこいくの?」ってこれもまた知らない爺さんに問いかけられて、
「どこでもないです」って答えて大学に着いて凹んでた。
私は何者なのか、どこへ向かっているのか、それらがわかる日が来るのか…。
あの頃と今、変わってないの、やばくないか。

外国人からのナンパは会話というより言語がふわふわしていて、いつも記憶に残らないのが特徴だ。


豆腐パンケーキはとっても分厚くてふわふわだ。
そのふわふわは、ヘルシーという座右の銘に、重増しという魔法がかかっていることを決して忘れてはならない。

パンケーキの焼けた匂いでいっぱいの部屋にこれから眠るのだと思うと、それだけで幸せな気持ちになる。
パンケーキが焼けるのを待つ私の膝の上に猫が2匹乗って、もう寝ようよと訴えてくる。






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