息子の授乳、そしていくつかの不満
最近とあるドラマを見た。
そのタイトルが、この記事のタイトル。
「息子の授乳、そしていくつかの不満」
このドラマはamazonオリジナルのオムニバスドラマ「モダンラブ東京」で、いくつかの「愛」がテーマになっている。
その中の第一話がなんと授乳話だった。
2話以降はもちろんパートナーとの話や、ラブストーリーもあるのに、一話目に授乳話を持ってきているのが衝撃的だった。
ドラマは、乳児の息子にミルクを飲ませたくない、かつしっかり仕事のキャリアも積みたい完璧主義のお母さんが、搾乳という形で母親の役割を成し遂げようとするお話。
「搾乳」というのは、お母さんが自分の母乳を搾ることで、
子どもと一緒に居られない時でも保存母乳を飲ませることができたり、母乳の分泌量が減少しないように維持するために行う。
母乳の分泌量を維持するためには頻回の授乳または搾乳が必須で、ドラマのお母さんは仕事中も隠れて、3時間おきに搾乳、その母乳を子どもに飲ませるために保冷して持ち帰る。
産後早くに仕事復帰する方には、こういう方も少なくないのかもしれないけれど、実際目の当たりにすると頭が下がった。
そして、キャリア上重要な海外出張中ももちろん、搾乳と母乳の持ち運びをしようとする…
というお話。
母乳で育てたい、というお母さんの気持ちが痛いほどわかったし、
その自然な気持ちを叶えるためにハードルがなんと多いこと。
共感とあるあるに頷きまくって、私も少し過去になってしまった自分の授乳の日々を
思い出した。
授乳は自然なことだけど、簡単ではない
私は、完全母乳にこだわりはないけれど母乳が出るなら飲ませたいなという気持ちだった。
そんなゆるい意識でも、一人目の、産後一ヶ月は精神的にめちゃくちゃつらかった。
何がつらかったかというと、母乳が出ているのか出ていないのか、体感として全くわからないことだった。
母乳は、『軌道に乗ってから』は、赤ちゃんが飲む分だけ前もってタンクに作られるようになって、それは体感としても「胸が張る(風船みたいにパンパンになって痛い)」感覚がある。
授乳するとそれが萎むので、「飲んでる飲んでる」とわかりやすい。
でも、じゃあ『軌道に乗る』のがいつかというと、大体1、2ヶ月くらいはかかるのだ。
それまでの1、2ヶ月は、赤ちゃんが吸うときにリアルタイムで生産されるので、感覚として「母乳出てる感」がない。
出てる感がないと、赤ちゃんが栄養不足な気がしてくるけど、一ヶ月健診まで確かめようがない。
この期間で、自分は母乳が出てない、出ない体質なんだ…と思い悩んで、ミルクに切り替える人も多分いると思う。(赤ちゃんの哺乳状態や、お母さんとの相性もある)
母乳を飲ませることをやめると、生産量はみるみる減って、止まってしまう。
産後、体はボロボロ、ホルモン状態も異常で、右も左もわからない状態なのに、母乳までそんなわかりにくい手探りの状態。
授乳量は赤ちゃんの発達や命に関わるので、本当に悩んだしつらかった。
本来は睡眠に当てるべきスキマ時間は
「新生児 母乳 足りない」「新生児 授乳頻度」等で検索ばかりしていた。
ノイローゼ気味で迎えた一ヶ月健診、体重は赤ちゃんの体重は目標以上に増えていて、思っていたより母乳が生産されていたことが分かった。
そんな苦しい一ヶ月の学びを活かし、2人目の時は産後すぐに赤ちゃん用に体重計をレンタルした。
赤ちゃんの成長も、授乳量も数値で見えるようになって、「わからない」不安がなくなった。
専門家でも、人によっていうことが違う問題
産後、母乳についての指導は助産師さんがしてくれるのだけど、病院によって、病院内でも人によって言うことが違うことがある。
1人目出産後、母乳で育てたいなら、産後すぐから、できるだけ頻回の授乳をするようにと言われ、つらい体に鞭打って3時間毎の授乳をした。
その時は母乳は生産準備中のため、ほっとんど出ていないのだけど、形だけ吸わせた。
あとから調べると、それが母乳量を増やすために一番大事なことらしかった。
でも、2人目を出産した産院では、夜間は赤ちゃんは預かってミルクをあげるので、お母さんは休んでもいいですよ、というスタンスだった。
私は上記の理由から頻回授乳をしたかったので、それを伝えると、
「お母さん、今は授乳してもほとんど母乳は出ないので、無理しなくてもいいですよ」
ということだった。
病院によってここまで違うんだなぁと驚いた。
結局は自分が信じた方へ進まないといけないので、母乳神話が生まれたり、一種の宗教みたいになるのかもしれない。
母乳でも、ミルクでも、すくすく育つ
冒頭のドラマでも、「私達母親は、何を選んでも罪悪感から逃げられない」というセリフがあった。
母乳かミルクか、保育園か家庭か、ワクチンを打つのか打たないのか…子どものための選択は山のようにある。
選択したことで親が背負う罪悪感は、悩んで悩んで、最終的には子どものことを思って与える愛情と同じだ。
そういう落とし所を見せてくれる、コンパクトでステキなドラマだった。
ちなみにこのドラマ、女性同士のパートナーが子どもを育てているという設定が、特にテーマとされるわけでもなくナチュラルにあった。
母乳に焦点を置くとどうしても「親の愛」ではなく「母親の愛」の話になるし、男親は理解しようとすることはできても、核心に触れることはできないと思う。
(「父親の愛」の話はまた別の書き方になると思う)
父親が出てきてわかったようなことを言われるよりも、女性しかいない方が主旨がハッキリしていいなぁ、上手に作ってあるなぁ、と思ってしまった。