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彼らの営業手法はとても興味深い

人生初のホストクラブが担当の店であったが、実を言うと初回は緊張しすぎてどこまで話して良いか分からず、全然楽しめなかった。でもなんだか暗闇に浮かぶ泡沫の思いを大切にしたくて、この世界を捨てたくなかった。

最初は歌舞伎町ではしごするのが怖くて、横浜や池袋の同業店舗を覗いた。彼らは実にフランクで、のびのび振る舞うことを教えてくれた。そこで楽しみ方を覚えた私はしめたとばかりに巡礼を始めた。

歌舞伎町ホストクラブの歴史は1970年代から始まっていると、石井光太の本で一通りの知的好奇心を満たし、歴史のある店舗、大手グループを一通り覚えて回った。

シャンデリアと薔薇が透けて見えるガラステーブルには心が踊った。そんな場で着飾っている人間たちにとてつもなく好奇心がそそられた。ドラマの世界なんかで言う「肩組み」なんてもっての他、基本は接触が敬遠されるこの世界の「売り方」は非常に興味深かった。「品」とは何かをよく考えさせられた。

壁一面のスクリーンに滝が流れていて、天上から木の根が生えている内装もあった。つまり、店舗が地下であるため、地底にいるという設定なのだろう。いつの間にか切られていたVIP席、天上からはシダを模した内装が垂れ下がっており、同じく黒髪を垂れ下げた有名ホストを指名すると意外にもずっと横に座っていてくれた。「アイドル営業」を名乗る彼の売り方を体感し「アイドル」とは画面の向こうの人を指すのではなく「地下アイドル」のことらしいとなんとなく分かった。

「オラオラ営業」かなあと思うホストもいたが、たまたま彼からかかってきた電話に出ることができて、たまたまその日空いていて、店に行けたというのは「タイミングを売る」(この言葉はくまの心が言っていた)ホストならではの醍醐味だと思う。野郎寿司の出前も取ってもらったし、めちゃくちゃセクハラされたし、その後ポッと顔を出した彼の配信で発言したら炎上配信に使われたことも良い思い出だ。店に電話をしたら以前にも同じようなクレームがあったらしい。なんというやつだ。

担当がホストを始めた店の話を聞いたところ、もっとおっそろしい関係性を繰り広げているのを目の当たりにしたそうだ。今もやっているかは分からないが、どこにそんなDV彼氏の需要があるのだろうか…


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