実用書「なぜ僕らは働くのか」よがり論
フリージャーナリストでありテレビにも多く出演されている池上彰さんが監修して話題になったのが「なぜ僕らは働くのか」。
この本のポイントは、小学校~高校までの学生に向けた「働くとは?」を題材にした内容であること。
子どもだけでなく大人も読んで為になる本は少なく、その中で「説明上手」で定評のある池上彰さんが監修した本となれば、注目を集めるのは自然の流れ。
私も、本屋の児童書コーナーに置かれていたこの本をずっと気にかけていた。いつか読んでみたいと思っていたところ、本屋ではなく図書館で巡り合った為、即持ち帰り、その日のうちに読破した。
内容はとても易しい。マンガが織り交ぜられているのでとても読みやすく、飽きない仕様になっているのが特徴。
社会のつながりや働くことで自分ができること、お金の話や好きなことを仕事にする方法など、子どもだけでなく大人も知りたい内容になっている。
現、大人の私からすれば当たり前の内容も多く、それ故に読むスピードも速かった。しかし働いてはいるものの「なぜ働くのか?」という問いにしっかり向き合うことはなく、ただ惰性で働いていた私にとって衝撃的な内容が随所にあった。
例えば、自分でできないことを誰かにやってもらう。自分にはできないことでも、それを得意としている人はいるし、好きでやりたい人もいる。そしてそれが仕事になる。仕事とは「自分のできることで社会に貢献すること」。
その対価としてお金を払う。それによって「ありがとう」の気持ちを伝えられる。こうして世の中は回っている。という真理なのに普段目を向けない内容が書かれていて、まさに寝耳に水を被った。
この本には「働くことの大切さ」と「ワークライフバランスの重要性」を提唱している。
働くことが大好きな日本人は、しばしば「人生=仕事」になりやすい。お金のために働く。そのために家族や友人との付き合いを絶つ。言い方は大げさに聞こえるかもしれないが、実際そんな日本人は至るところにいる。
働くことは社会貢献になるが、働き過ぎることで自分の幸せをないがしろにしてはいけない。こんなメッセージが優しく説かれていた。
現に自分の幸せは二の次で、社会もとい会社に全身全霊をかけて散っていく人のなんと多いことか。
そんなに仕事が好きなら殉職といえるが、ほとんどがそうではないだろうし、なんなら「辞めたい」と思っている可能性の方が高い。
世界に羽ばたく「過労死」というワードにもはや説明はいらないだろう。ちなみに私が海外で出会った友人たちも過労死を知っていた。そのくらいメジャーで、国内外問わず問題視されているのが日本人の働きぶり。
たくさん働くことは悪くない。しかし限度があるし、働いた分賃金を貰う権利が労働者にはある。そこを忘れないようにしよう。
仕事をする上で大切なのが「どんな仕事をするか?」だが、この本では仕事の見つけ方も紹介している。
好きを仕事にすること。簡潔に言えばそうだが、全員が全員サッカー選手になれないし世界的アーティストになれるわけではない。そういった現実も事前に教えてくれる良書となっている。
では、好きなことを仕事にしたい、例えばサッカー選手になれなかった人はお先真っ暗で、やりたくもない仕事に従事しなくてはいけないのか?
いや、そんなことはない、と手を差し伸べてくれる優しさもあるのがこの本の特徴で、飴とムチの使い方が上手い、と感心した。
サッカー選手になれなかった人には「サッカーに付随する他の仕事を探しなさい」と書かれている。要はサッカー用品の製作や販売、もしくは監督やスポーツトレーナーになるのはどうか?と提案している。
夢は一つじゃないし、一つの職業にもたくさんの職業がつながっていて、そのどれもが欠けてはならないもの。だから一つの夢がダメになっても、諦めることはない。他の道で自分の好きなことを仕事にしよう、と進めている。
また、多くの人は自分ができることは軽視しがちだ。だが、他の人からしたらそれには大きな価値があり、お金を払いたいと思う人がいる。
提供できるサービスと需要があって仕事は成立し、それによって世の中は回っている。
だからこそ自分の特技や性格を知り、自分に合った適職を探すことで自分も相手も幸せになれる。そんなことが書かれている。
仕事における「ガマン」にも言及していて、「良いガマン」と「悪いガマン」があることを提示。
良いガマンは、仕事の面白さや経験を通して得るもので、自分の成長につながるガマン。
悪いガマンは、やりがいがなく労働環境や労働時間が長い。そして心身がつらくなるガマン。
ブラック企業に潰されるな!と力強いメッセージ付きで、ガマンのリミットを紹介している。
日々ガマン尽くめで働いている私たちにとって、これほど沁みる言葉はないのではないだろうか。
未来の働き方や生き方、つまり昨今騒がしいダイバーシティの重要性についても言及。
変化の激しい現代だからこそ、時代に合った生き方を選択する必要がある。また、幸せの形や他人とのコミュニケーションの取り方など、働く以外にもさまざまな知恵が学べる。
生きるとは多様な人と関わり、自分の特性を生かした仕事をすること。そして社会や世の中が良くなるよう、自分のできることを精いっぱいすること。
働くだけが幸せじゃないように、だらけるだけが幸せでもない。
大事なのはワークライフバランスで、自分が快適と思える仕事と業務内容、人とのコミュニケーションによって初めて幸せは得られる。
自分だけの幸せを追い求めても、相手だけの幸せを願っても幸せにはなれない。何事もバランスが大事で、「自分が好きと思えること」を見つけるのが幸せへの最短コース。
イヤイヤ働くのではなく、やりがいを持って、自分の得意を活かして社会貢献しよう。そして自分の幸せも忘れずに。
以上、「なぜ僕らは働くのか 監修:池上彰」を読んだ、よがり論でした。
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