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【医学生向け】パーキンソニズムの鑑別②<演習編>【国試対策】

こんにちは、ばくふうんです。
前回、パーキンソニズムの鑑別について、国試で問われるエッセンスを解説しました。
前回の記事はこちら↓

今回は、この内容を踏まえて、実際に国試の過去問で演習してみたいと思います。

問題1(116D34)

59歳の女性。歩行障害を主訴に来院した。半年前から立ちくらみとともに歩行時にふらついて、よく壁にぶつかるようになった。同時期から頑固な便秘を自覚し、尿失禁もみられるようになった。歩行障害は徐々に悪化し、1週間前には転倒した。最近では箸も使いにくくなった。既往歴、家族歴に特記すべきことはない。仰臥位での血圧は110/70mmHg、脈拍60/分であり、起立2分後の血圧は80/60mmHg、脈拍62/分であった。心音と呼吸音に異常を認めない。胸腹部には異常を認めない。神経診察では構音障害を認める。上肢では鼻指鼻試験で両側の測定障害がみられ、回内回外試験では変換運動障害も認める。四肢には両側とも同程度の筋強剛を認めるが振戦はみられない。歩行時には体幹動揺を認める。
考えられる疾患はどれか。

a. Parkinson病
b. 多系統萎縮症
c. Huntington病
d. 筋萎縮性側索硬化症
e. 大脳皮質基底核変性症

【解説】
便秘、尿失禁、起立性低血圧 →自律神経障害
構音障害、四肢運動失調、体幹失調 →小脳失調
四肢の筋強剛 →パーキンソニズム
よって、自律神経障害+パーキンソニズム+小脳失調よりb. 多系統萎縮症
症候のみで正答できる問題ですね。正答率も93%と高かったようです。

問題2(106A52)

70歳の女性。しばしば転ぶようになったことを主訴に来院した。1年前から、椅子から立ち上がったり車の後部座席から降りたりする際に尻もちをつくようになり、次第にその頻度が増加した。1か月前からしばしばむせるようになった。意識は清明。眼球運動は上下方向が制限されており、特に下方視で制限が著しい。入院後の患者の写真を別に示す。

この疾患で認められるのはどれか。

a. 静止時振戦
b. 腱反射の消失
c. 線維束性収縮
d. 頸筋の筋緊張亢進
e. 筋緊張の著明な左右差

【解説】
(症状)
1年前からの易転倒性の進行 →早期からの姿勢反射障害
垂直方向の眼球運動障害 →核上性麻痺
※特に下転制限が強いのが進行性核上性麻痺の特徴なのだが、覚えなくてよい
(写真)
Parkinson病によくみられる前傾姿勢ではない。
実は頭部がやや後方へのけぞっているのだが、受験生にそこまで読み取らせるのは酷だろう。
以上より、進行性核上性麻痺の症例と判断でき、体幹優位の筋強剛が特徴のひとつなので、頚部の筋強剛が著明となります。答えはd. 頸筋の筋緊張亢進です。体幹優位の筋強剛という点を抑えきれていなかった受験生が多かったのか、正答率は81%とやや低めでした。

問題3(113D82)

65歳の女性。2年前から物の名前や言葉が思い浮かばず、ろれつも回りづらくなり、会話がたどたどしくなってきた。1年前から徐々に右手の動きがぎこちなくなり、ボタン掛けや箸使いが困難になってきた。最近、右手が勝手に動き、自分の意志では制御できなくなってきたため受診した。意識は清明。身長153cm、体重43kg。体温36.1℃。脈拍72/分、整。血圧118/68mmHg。改訂長谷川式簡易知能評価スケール19点(30点満点)、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉22点(30点満点)。発語は努力性で非流暢であり、発音も明瞭ではないが、言語理解は保たれている。右上肢には衣服をまさぐるような動きが断続的にみられ、制止を指示すると自らの左手で右手を抑制する。右上肢には高度の筋強剛がみられるが、左上下肢の筋緊張は正常である。筋萎縮や振戦は認めない。四肢の腱反射は正常で、Babinski徴候を認めない。歩行では右下肢の振り出しに遅れがみられる。頭部MRIのT1強調冠状断像を別に示す。

最も考えられるのはどれか。

a. Parkinson病
b. 前頭側頭型認知症
c. Alzheimer型認知症
d. 特発性正常圧水頭症
e. 大脳皮質基底核変性症

【解説】
2年前から緩徐に進行 →変性疾患
言語理解は良好だが、発語が非流暢で不明瞭 →運動性失語
右上肢に巧緻運動障害
HDS-R 19/30、MMSE 22/30 →認知機能低下
右上肢を制御できず、左手で無理やり止める必要あり →他人の手徴候
右上肢の筋強剛、右下肢の動作緩慢 →左右差のあるParkinsonism
MRIで左半球優位の萎縮あり →左右差のある大脳皮質の萎縮

以上より、症状の左右差、他人の手徴候、MRI所見からe. 大脳皮質基底核変性症と診断します。
他人の手徴候とは、「自分の手が自分のものでないように感じる」わけではなく、「自分でも制御が効かず、無理やり抑え込まないと止まれない」状態を指します。国試までのどこかで一度動画で見てみると忘れないと思います。
なお、大脳の萎縮を反映して認知機能低下をきたすことは、実臨床ではままある話なのですが、この問題を解く上では必須の情報ではありません。この認知機能低下の情報の為か、正答率は80%とやや受験生に迷いが見られたように見受けられます。

まとめ

いかがだったでしょうか?
パーキンソン病/パーキンソン症候群は神経領域でも必ず問われる分野のひとつですので、確実に得点できるようにしておきたいですね。
医学生の皆さんの受験勉強の一助になれれば幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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