さよならガーリッシュ

 誕生日の日、わたしはその日で40歳になったことを黙って一日を終えた。

 誕生日に浮かれる歳でもないでしょうと突っ込まれそうだけど、節目の歳だから自分の中では充分盛り上がっていた。でも「わたし今日で40歳になったんだ!」って言われたほうの身になると、そんなこと言われても困るだろうなって思ったのだ。だから静かにその日を過ごし、しばらく経ってから会話のなかで「40になったからさー」と言ってみたら、案の定聞き流された。「そうですか」ともなんとも言われないの。無言でスルー。40歳っておめでたい事じゃないんだねやっぱり。反応に困ってたよ。当日騒がなくてよかったよ。

 周りがどう思おうと、自分にとっては大事な節目。この1年間は自分のことをもっとちゃんと知ろうと思った。そこで、そろそろ結論を出さないといけないあの問題に決着をつけることにした。

 無駄な買い物をやめたい(特に服)

 わたしは街に買い物に出ると、試着もしないで服を買う癖がある。ファーストインプレッションで「これいい!」と思った服はロクに考えもせず即買いなのだ。これがいけない。結局似合わずにタンスの肥やしになってしまった服がたくさんある。

 どうも自分は、女の子らしいかわいい服装は合わないらしい。ピンクとかフリルとか。あと、タートルネックも着こなせたらカッコイイと思うんだけど、どうにも似合わないのだ。哀れタンスの引き出しの中で風化していくピンクのカーディガン、黒のタートル、フリルのブラウス。着るのはいつも地味な色のシンプルな形のヤツだけ。グレーとか茶色とか紺とか。

 もうそろそろ認めないといけない。自分が憧れるスタイルは自分には似合わないということを。今さら?ってびっくりする人もいるかもしれない。遅いかもしれないけどちゃんと知ろう。自分に似合う色や形を。

 Webで調べてみたら、どんな色が自分に会うかわかる「パーソナルカラー診断」と、どんな形が似合うかがわかる「骨格診断」を一緒に出来るサロンがあったので予約して行ってみた。

 診断当日、サロンに着くとまず最初に問診。服を選ぶ時の悩みや自分のなりたいスタイルを聞かれる。これは難問だ。自分のなりたいスタイルってのがわたしはよくわからない。ピンポイントで「こんな色が好き」とか「こんな形をかわいいと思う」とか、そんなことは答えられるんだけど。

 まあ、前述のとおり、フリルとかピンクとかにあこがれがあるので、恥ずかしながら「女の子らしいかわいらしいスタイル・・・かな?」って答えといた。なりたいスタイルなんて今まで考えたこともなかったなあ・・・。40歳になって「ガーリッシュ」を切望するのなんて、なんか寒いなあ。わたしは若作りってのが好きじゃないんだ。カワイイの着たいけど年相応で行きたいという相反する感情はどうすればいいのさ。ともかく

・買い物に行くと試着せずに買うことが多いので失敗をよくすること
・タートルネックに憧れるけどどうにも似合わないこと
・ピンクが着たいけど似合うかどうか解らないから積極的に買えないこと
・いつも着るのは、結局無難な色や形であること

を訴えて、同時にカラーチャートの中から自分の気になる色を選んでいった。(特にピンクのことについては強めに訴えておいた)

 問診が終わると、いよいよ似合う色の診断に移っていく。大きな鏡の前に座り、様々な色の無地の布を胸元にあてて行く。顔色とマッチする色を調べる方法で、全部で120色合わせて、おおまかにどんな色が似合うか、似合わない色はどんな色かも見ていく。

 正直自分では「あきらかに似合わない色」については「コリャ似合わん」ってわかるんだけど、「似合う色」に関してはわからなかった。だけど、サロンの人はやっぱりプロだから、どんどこ布を取り替えては「これが似合う」「この色味の中でも特にこれがいい」ということを判断していく。途中メモを取ったりもしない。全部覚えているのかな。

 カラー診断が終わると、次に骨格診断をする。自分の骨格(砕いて言うと体型)から、似合う服の形というのを見ていく。サロンの人に詳しく骨格を見てもらい、その後鏡の前でどんな襟の形が合うか、実際に襟を合わせて見ていく。合わせたのはラウンドネック、スクエアネック、タートルネックなど。

 すべて終わると、診断結果の説明がある。わたしは暖色系のやや渋めの色が似合うらしい。何度も訴えていたピンクに関しては、鮮やかなものや青みのものは似合わないけど、コーラルピンクやサーモンピンクなら着てもOKということだった。似合わないのは青みの色(寒色系)で、着ると顔色が沈んで見えるそう。鮮やかな原色系も苦手。俗に言う「きれい色」ってのがダメらしい。選ぶときは原色に少しグレーを混ぜたような色合いを選ぶことと言われた。

 そして体型としては上半身にボリュームがあるので、胸元のフリルとか、パフスリーブとか、ボリュームをアップさせてしまうものは似合わない。タートルネックについては、首が詰まり、上半身のボリュームを強調させてしまうのでNG。オフタートルでもダメ。上半身はシンプルな形のものでコンパクトにまとめ、ボトムと合わせて、ストレートなラインを選ぶのがいいそう。スカートもミニとかダメで、ひざ下丈のものがいいとのこと。服の生地についても、シフォンなどの透ける素材はダメなので、しっかりした生地を選ぶように指導があった。

 加えて、似合うメイクカラーやヘアカラーも教えてくれて、ファッション雑誌のスクラップから「似合うコーディネート」を提案してくれた。最後に、カラー診断で合わせた120色のプリントされたものをもらった。すべての色に「似合う」「使ってもいい」「NG」の評価がされていて、わかりやすい。ちなみに「似合う」「似合わない」は特に上半身(顔色との相性)を見たものなので、NGの色でもどうしても着たけりゃボトムに持ってきて、上半身で「似合う色」を使えばまあOKという感じだった。

 家に帰ってから持っている服を全部引っ張り出して、似合わないものは処分した。断捨離が進む進む。本当はなんとなくわかってた。きれいなピンクやタートルやざっくりニットが似合わないこと。でも自分で思ってるだけでは「選び方が上手くなればどうにかなる」とか「今似合わなくてもいつか似合うようになる」って思ってしまうものなんだ。

 今回、他人から「それNGです」と言われることでようやく踏ん切りがついた。着たかった色や形がことごとくダメと言われて若干落ち込みもしたけど、似合うもの、似合わないものがはっきりしたことで、これからは無駄な買い物を減らすことができそうだ。センスはないからお洒落にはなれなくても、最低限「ダサくない」程度の自分を演出することはできそうだ。

 さよならガーリッシュ。わたしはわたしらしいスタイルで生きていく。

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