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やる気が起きない日の読書

せっかくの休日なのに、どうにもこうにもやる気が起きない。そんな日がある。
朝起きた瞬間にベッドの中で直感するのだ。あ、今日は無理だな、と。
明日はこれをやろう、あれもやってみようと、意気込んでメモしたスケジュールを眺めながら、「昨日の自分はどれだけ活力がみなぎっていたのだ」と唖然とする日。
二日続けてエネルギッシュに生きられる大人はいない。

というわけで、やろうと思っていた掃除も筋トレも明日の自分にまかせて、ひたすら寝転がって読書をすることにした。
毎朝の読書で試し読みをした本の中から、続きを読みたいと思っていた本のタイトルを眺めていると、こんな日にぴったりの本があった。

著者であるゆるふわ無職さんが、「寝そべり族」と呼ばれる無職の人々が中国で増加した社会的背景や、ご自身の体験をふまえて、「働かない」ということを深掘りした本だ。

なるべく働かずに生きていきたい。
そんな人が現代で生きていく為の方法として、著者は以下の五つを挙げている。

  1. 最低限だけ働く

  2. 働いているつもりのない仕事をする(好きなこと、苦にならないこと)

  3. 投資

  4. 自給自足

  5. 支援を受ける

この本の良いところは、「働かない」ということを100か0かで語っていないことだ。
働きたくない根本原因にしても、社会的背景や個人の適性などの例は挙げるが、どれか一つに断定することはしない。純粋に、こだわりを捨ててもっと自由に「なるべく働かないこと」を求めてもいいのではないかと提案している。

寝そべり生活をするためには、正しく真面目に怠惰しなければならない、と著者は言う。
そのためには「持続可能な寝そべり目標(SNGs)」を掲げ、自炊と自重筋トレで健康維持にも余念がない。
心の平穏を保つために、哲学を学ぶこともすすめている(著者いわく、哲学は心の護身術)。

この本を最後まで読み、ミステリ作家の森博嗣さんが著書の中で、「働かざる者食うべからず」を下品な格言と評していたのを思い出した。
結局のところ、「働かない」ことに対して世間の目が冷たいのは、「自分がこんなに苦労して働いているのに、あいつは働いていないなんてずるい」という嫉妬の発露なのだ。

そんな世間の目を恐れて、無理をし続けた先に何があるのだろうか。
働くことの辛さがやがて、自分や他者(あるいは社会)を害する暴力性に繋がってしまうくらいなら、「なるべく働かない」ことで自分と他者を守っていいと私は思う。

どんな生き方も、人を傷つけない限りは自由だ。
本人が納得してさえいればいい。
最後に、私がいつも心のお守りにしている江國香織さんの詩を引用して終わろう。

どっちみち 百年たてば 誰もいない
あたしもあなたも あのひとも

「寝そべり族マニュアル: なるべく働かないで生きていく」はKindle Unlimitedでも読めます。

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