読んだ本の内容を思い出せないのは
読書をしていると、読んだ本の内容を忘れてしまうことはよくある。
フィクションにしてもノンフィクションにしても、読んでいる時は感銘を受けたり、知らなかった情報に刺激を受けたりするのだが、2週間もすればその読書体験を思い出すことがなくなっていく。
そんなことをつらつらと考えていたら、「忘れる」ことに関する本を読んでみたくなった。
こういう時、Kindle Unlimitedを契約していると本当に便利だ。
Amazonの検索窓でKindle Unlimited読み放題ジャンルを指定して、「忘れる」とキーワードを打ち込んでみる。
検索結果の中から、この本を選んで試しに読んでみることにした。
本著のまえがきによると、「頭の良さ」=「忘れないこと(記憶力が良い)」ことだと思われがちだが、あらゆる情報に瞬時にアクセスできる現代においては、むしろ「忘れるスキル」が重要なのだという。
そして、人間の脳はもともと、物事をただ単純に覚えるよりは、覚えたものの中から自分に必要なものだけを残しておく能力に優れていると。いわゆる、編集・整理の能力だ。
忘れるとは、整理されていること
本著の中で、フランスの哲学者アンリ・ベルクソンのこんな言葉が引用されている。
思考でも行動でも知識でも、本当にその人の身についたものは忘れてしまうのだという。
覚えていることを忘れても、それができる。
「忘れる」ということは、「覚えたことが頭の中に整理されているということ」なのだ。
脳科学者の著者は、脳の仕組みとしてこのことに触れているが、ふと、宇多田ヒカルさんの曲に、「失くしたものはもう心の一部でしょ」という歌詞があったのを思い出した。
脳であれ心であれ(それが科学的にどう区別されるのかは私にはわからないが)、自分の一部として吸収したことは思い出さないのだろう。
そうやって、記憶という形を手放して身軽になって、新しいことを感じ取る余白が生まれるのかもしれない。
忘れるとは、脳と心の余白づくり。そう思うことにした。