聴講リポート「複数のつながりとコミュニティが人生を1.5倍豊かにする」石山恒貴さん×廣瀬俊朗さん×志水静香さん
株式会社ファンリーシュ主催で11月17日に開催されたオンラインセミナーを聴講した経験を、振り返りリポートに書いてみます。
パラレルキャリアの第一人者である石山恒貴先生と、ラグビー日本代表のキャプテンを務め、現在は起業家として活躍されている廣瀨俊朗さん。お二人からの幅広いお話を聴きつつ、自分の未来までも想いが巡ったことが、この日の大きな魅力だったと感じています。
▼ 石山恒貴先生のご経歴は下記です
更に詳細な内容はコチラから https://researchmap.jp/nobutaka_ishiyama/
▼ 廣瀬俊朗さんのご経歴は下記です
更に詳細な内容はコチラから https://hiraku-japan.com/
▼ 司会の志水静香さんのご経歴は下記です
更に詳細な内容はコチラから https://funleash.jp/about/
いま多くの人が関心をもつ、「人生を豊かにするために個人ができること」という問いに対して、働く場所やキャリア・活動を、自らどのように選択して、広げることができるのか、ポイントを振り返ってみます。
●越境やパラレルキャリアから見えてくるもの
まず冒頭に、石山先生から「コロナの影響による社会の変化」などを踏まえつつ、「パラレルキャリアや越境学習について」のポイントが触れられました。
【社会での変化】
・都市などへの過度な集中システムの脆弱さが明らかになった
・日本の経営者の認識にも変化(自然との共存、社員の幸せへの意識など)
お話の中でも興味深かったのが
「越境やのパラレルキャリアに関する考え方」です。
パラレルキャリアに関しては、下記のような4つのワークがあり、そのうち2つ以上の場所に同時に存在すると「越境」と言えるのではないか、とのことです。
家庭ワーク・・・家事、育児、介護など
有給ワーク・・・雇用、自営、兼業・副業など
ギフト地域ワーク・・・ボランティア、地域活動、NPO、社会活動など
学習趣味ワーク・・・学びなおし、趣味/サークル、リカレント教育、社会人大学、勉強会など
この越境の実践例とメリットについて
「プロボノ(自分のスキルを活かしてボランティアする活動)」実践者の方へのヒアリングから、下記のような特徴も紹介されました。
・上司がいないので、上下関係がない
・社内用語のような共通言語がない
・やるべきことやゴールも自分で決める
・決まりごとが無い、多様性や曖昧さに慣れる
このような越境の経験を通じて、
「自分の今までの環境は当たり前だったんだろうか?」
「当たり前って何だろう?」
と考える、省察(せいさつ)と呼ばれる機会につながるそうです。
変幻自在に変えられるキャリアは「プロティアンキャリア」とも呼ばれ、今の時代には「変化対応力が注目されがちだが、同じくらい自己認識力も重要である」との内容も印象深かった点です。
特に自己認識については、常にホームにいると分からなくなりがちであるとのこと。そこで「自分の価値観を知る」ためのアプローチの1つとして紹介された、幼少期に影響を受けた人物やキャラクターなどを紹介し合う、などの方法は、手軽に実践できる方法の1つかと感じます。
●変化し続けるサードプレイス
次の大きなテーマとして、越境やパラレルキャリアの舞台となる「サードプレイス」について解説されました。
この中でも、印象に残ったメッセージがあります。
【MBAよりPTA】
様々あるサードプレイスの中でも、ある目的のもと義務的に参加するもの、という印象の強かったPTA活動さえも、今では自発的に参加する人たちが増えてきているそうです。
そこでの出会いを通じて、更に大きなコミュニティに発展する事例もあることから、最近では「MBAよりもPTA」と言われることもあるとのお話は、意外性もありつつ、興味深く感じた点です。
更に、サードプレイス事例として紹介された下記の2つからも、様々な想いが巡りました。
・茅ケ崎にあるコワーキングスペース 「チガラボ」
・様々な街にある100人カイギの事例
それぞれの事例についてお聞きしてみると、様々な場所でコミュニティが生まれつつも、その在り方も1つではなく、参加するメンバーや時代の傾向によって形を変えているように感じました。それらに関わる方々が、何より自分たち一人ひとりの価値観に目を向けているからこそ、そういった変化が生まれていくのかもしれません。
石山先生のご講演の終盤では、越境やパラレルキャリアの今後という視点で、これらを選択する人が隠れキリシタンのように、ホームに公表しない形で活動するという実情についても注目され、会社や組織からの「見られ方・意味付け」についての課題感が示されました。
実際に自分がその立場として考えた時、所属していた組織で話せるだろうか・・・と考えると、こういった話題の切り出し方に、意外と悩む人は多いかもしれません。
●今だけでなく、過去と未来も含む
次に登壇された廣瀬さんのお話は、15分という凝縮されたご講演でしたが、ご自身の今の活動へと繋がっていくベースとして、以下のポイントが挙げられました。
・ラグビーにあるお互いを尊重する文化
・常識や前提が違う環境を通して自分を知る
・昔から「好き」「面白そう」と感じる気持ちを大切にしてきた
これらをもとに展開された、パネルトークでの各質問への答えからも、廣瀬さんの純粋な想いが強く強く伝わってくる時間がありました。
ご講演内では、冒頭の石山先生の「幼少期の自分から振り返ってみる」という点にも共感され、
「つい現状(今)を中心に考えがちだが、過去や未来も含めて考えてみることで、更に深く自分を知ることが出来る」とのお話も、大切なポイントだと感じます。
●違う立場だから盛り上がる問いかけ
石山先生と廣瀬さん、志水さんとの3人パネルトーク&質問へのお答えでも、廣瀬さんの人柄や想いをたくさん感じられる時間がありました。
Q 新しい世界への一歩の踏み出し方は?
この問いに石山先生からは、最初は同じものに興味を持つ仲間のような存在を見つけるのも1つの方法。「あの人が誘ってくれるなら行こうかな」といった、縁を受け取るというアドバイスも伝えられました。
廣瀬さんからも、縁をキッカケに「面白そう」と感じてきた部分は大きい、とのお答えがありました。周囲からの影響という点では、研究が進んでないと感じていた時に「考えているだけで既に進んでいるよ」という周囲の一言で新しい気付きを得た、というエピソードには志水さんも「深い!」と共感されていました。
また、何かを始める時は、最初の山(第一歩)が一番キツイ。でもその山が無ければ、これで大丈夫だろうか・・・という危機感もある、とも伝えられ、志水さんや石山先生からも大学院でのエピソードが深堀されました。
その話題の中で、ラグビーの場合は、相手チームもみんなで盛り上げよう!という考え方があるものの、ビジネス視点に偏っていると、パートナーなどの関係先に対する尊敬が弱くなりがちなど視点の違いを、大学院でのご経験から学ばれた、というお話は分かりやすく印象的でした。
Q 廣瀬さんの原動力は?
この問いには、「学んだり、知らないことを知ったりすることが好き」という気持ちが幼い頃からあった気がすると廣瀬さんは振り返られました。今までやったことがないなら、やってみようという発想が原動力になっている。ワクワクしていたい、という気持ちもベースにあり、今までになかったことに気付くことから、やってみよう!という発信に繋がっていったそうです。
この廣瀬さんからの答えを聞いた上で、石山先生から廣瀬さんの魅力が深堀され、
原動力となる「好き」という気持ちがあるだけに限らず、未来を考えつつ、過去も振り返った上で、今の行動に繋がっていることが素晴らしい、とのコメントには志水さんも強く共感されていました。
Q リーダーシップで大切なことや、廣瀬さんのリーダー像は?
廣瀬さんは「リーダーは、こうでなければならない!」というリーダー像ではなく、自分自身の得意なスタイルを把握できているかポイントだと伝えられました。更に根本的に大切なのは、言動が一致すること。また、人は発言することで当事者意識を持つことから、その点も行動する上で意識されたことの1つだそうです。
また、リーダーのポジションは様々で、キャプテンと監督も求められることは違う。本物のリーダーシップとは、その人らしさを持っていること。キャプテン時代は、監督のスタイルの違いも意識しつつ、メンバーの気持ちを繋げるコミュニケーションに注力していた、とのコメントもありました。
この点については、志水さんから廣瀬さんの「聴くスタイル」についても問いかけがあり、
基本的に、自分よりも周囲の人たちの声やアイデアに魅力や可能性を感じるので、それを活かせるコミュニケーションを意識していた、との廣瀬さんからのお答えもありました。
この問いでのやり取りを聞いていく中で、
自分には〇〇が出来る!!という前提のリーダー像やセルフブランディングに限らず、周囲や広い範囲に気持ちを傾けること、その中での自分の在り方を見つけることの大切さを教えて頂いた気がします。周りが見えていくからこそ、自分も見えてくる・・・のかもしれません。
Q 石山さんや広瀬さんに影響を与えたキャラクターは?
まず石山さんからは、ONE PIECEのキャラクターである、不死鳥のマルコが挙げられました。海賊団の隊長でありながら、キャリアカウンセラーのように皆の考えを言語化させるタイプとのことで、その姿はまさに廣瀬さんのようであり、今の石山さんにも大きな影響を与えている存在だそうです。
一方の廣瀬さんは、アニメのキャラクターではないものの、ミスター・ラグビーと呼ばれた平尾誠二さんのお名前が出ました。その理由として、スマートでカッコ良くて、合理的でないものも必要だという哲学的な思考もお持ちで、ラグビーの枠にとらわれない姿に惹かれていたというお話が紹介されました。
この話題での楽しいやり取りを聴きながら、「私の場合は・・・」と考えた方は多かったのでは?と感じます。
Q 越境学習において、ホーム(仕事)とアウェイ(越境)が入れ替わるという発想はあり?
この点に石山先生は、ご自身の研究室での話題も例に、越境している人の多くは、ホームで出来ないことをアウェイで実現したいという想いも強く、それも良いのではと解説されました。
副業をする際に、ホーム(本業)に還元するべきという考え方は絶対ではない。結果として、お互いに良い影響を与えるという場合もあり、どちらが何を・・・と考え過ぎなくてもクロスオーバーする状況もある、と伝えられました。
Q セカンドキャリアを見据えての準備していた?
廣瀬さんからは、スキルという視点でMBAの取得はあったが、詳細に準備していたわけでもない。「こんな世界になったらいいな」という想いはあり、気持ちを優先していった。縁や偶然によって起きていることもあり、ドラマ出演もその1つ。会社員を辞めてからドラマのオファーが来て、会社員のままだったらドラマには出られなかったそうです。
同じく石山先生も、偶然からの今があることが伝えられ、お二人のお答えからも、将来を考えていく時に「これがあったから!」という事柄だけではなく、様々な出来事や縁のつながりから次のキャリアが形作られていくことを、改めて感じました。
Q 多様なネットワークの広げ方は?
この問いでは、お二人から同じメッセージが語られました。石山先生から「こういうの良いですね」と言葉や口に出して言うと叶う場合も多い、とのお答えがあると、
廣瀬さんからも、やはり発信は大事だと共感のコメントがありました。「この人は何がやりたいのか」が伝わることで、誰が紹介してくれるのか・・・に繋がっていくので、縁や想いを大切にされているそうです。
Q 今後に向けての展望は?
石山先生は「職場内の越境やパラレルキャリア、サードプレイスの存在意義に関する研究をしたい」との想いが語られ、志水さんもこのテーマに引き続き強い関心を寄せておられました。
廣瀬さんからは「サステナブル×スポーツに取り組みたい。スタジアムのゴミ問題や提供される食べ物の充実など、みんなが楽しめる環境づくりや、日本各地の古き良きもの(例えば味噌など)も活かしながら考えていけたら。」とのビジョンが伝えられました。
●自分の変化を感じるコンテンツとの出会い
ご講演された石山先生と廣瀬さんのお話は、大学院教授と起業家という別の立場でありつつも「自分の価値観を知っていくこと」という共通のキーワードに辿り着くものでした。お二人の人柄が画面いっぱいに伝わってくる、とても魅力的な時間でその場を楽しむお二人の方の空気感に、オンラインながら惹き込まれていく自分もいました。
偶然出会った今回のオンラインセミナーから、いま自分の中にあった疑問や迷いに対してヒントを得られたことで、コンテンツにも縁がある気がしています。その縁を受け取れたことへの感謝と、自分自身でもこの機会を未来へつなげていきたいと感じています。