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黄金比画家と醜悪2

俺の絵は美しい。世界で1番美しい。
誰がなんて言おうと、この絵は素晴らしいのだ。

しかし、世間は俺の絵を認めやしない。
こんなにも秀逸で醜悪なのに、目を背けるのだ。

そして今日も安酒に明け暮れる。

俺の画家生活は、上手くはいってなかった。

俺が世界一と思って作った作品は、
二束三文にすら売れず、気味悪がられるだけ。

バイトのない時は毎日広場で展示販売をしているが、群衆に一目見て目を背けられるだけだった。

何故こんなにも美しいのに、誰も認めてくれはしないのだろうか。
俺という人間の色は社会には不適合なのだろうか。
自分が心地よいモノをそのまま表現してるだけで、世間は腫れ物扱いする。

いつしか、アルコール依存し、ODし、生活はめちゃくちゃであった。

人生の全てを捧げる絵を、
認めてくれる人が1人もいない孤独で押し潰されるのだ。
こんなに必死になって夢を描いているのに、立ち止まる者はだれもいない。

たかが、絵ごとき。
たかが、孤独ごとき。

たかが、こんなことで憂鬱になって、
たかが、憂鬱でまともに働くことすらできなくて。
いつしか、部屋に引きこもって、酒と大量服薬を繰り返すだけの日々になっていた。

何が不安かさえ、もはや分からないまま、
全ての記憶を消し去るために、夢を見る。

今は何時で何月か、俺は何か、
全てがどうでも良くて、死んですら構わなくて。

そんな朦朧の意識の中、一度だけ絵を描いたことがある。

気分が良かったからか、悪かったからか、
とにかく何故か分からないが、描いた。

その絵をシラフで見ると、
混沌の塊でしかなかった。

だが、何故か心が落ち着く絵であった。

廃退。混沌。虚無。鬱。
この絵には全てがこもっているように見えた。

しかし、人に見せれたものではないと、
多分押し入れにしまったのだと思う。

その程度の記憶だ。

寝返りを打った瞬間、
空き缶がカランと転がる音が聞こえた。

携帯の通知も鳴っている。
どうせ、また、バイトをクビになった知らせだろう。そう思って無視した。

ふわーっと体が重くなるような、軽くなるような感じがしてきた。
早く現実から逃げさせてくれ。
そしてそのまま、起こさないでくれ。

俺が堕ち終わった後、
驚くことなど夢にも見てなかった。

あの絵は…

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