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新しい推し活!『推し短歌』のすすめ

みなさんは、『推し短歌』というものをご存知ですか?

その名の通り、推しについての想いや推しの好きなところを短歌に詠む文化のことを指します。この推し短歌、推し活の新しい形として、最近注目されているのをご存じですか?

その人気ぶりは、本まで出版されるほど!

これからもっと広がっていくことが予想される推し短歌。この記事で予習して、あなたもいち早く始めてみませんか?


推し短歌ってなに?

推し短歌とは、漫画・アニメのキャラクターや好きな芸能人など、さまざまな『推し』に対する想いを短歌に託す新たな表現方法です。イラストや小説を書いたりするのと同じく、ファンアートの一種とも言えるでしょう。

X(旧Twitter)などでは、さまざまなファンが推しへ捧げる短歌を投稿しています。漫画やゲーム作品によっては、ファンの間で独自のハッシュタグが作られるほどの盛り上がりを見せているようです。


推し短歌入門

独自の発展を遂げている推し短歌。興味を持った人もいるのではないでしょうか。

けれど、いざやってみたい!と思っても、なんだか難しいイメージを持ってはいませんか?

そもそも、国語の授業以外で短歌に触れる機会がなかった人もいるかもしれません。

そんな人でも大丈夫!初心者にぴったりの入門書があるんです。

それが、榊原紘さん著の『推し短歌入門』。

この本では、歌人の榊原紘さんが、実際に推しを題材に作った短歌を題材にしながら、推し短歌の作り方や楽しみ方を紹介しています。『呪術廻戦』や『ハイキュー!!』『SLAM DUNK』など、さまざまな作品を題材にした短歌が登場しますよ。

もしかしたら、あなたの推しもテーマになっているかも……?

しかも、なんとこの本、出版元である左右社が、noteで冒頭を無料公開しているんです!気になった方は試し読みしてみては?

推し短歌を詠んでみる

ここからは実践!
実際に、筆者が推し短歌を詠んでみます。

とは言え、筆者も超初心者。すぐに新しい短歌なんてひねり出せません。

そこで、以前筆者が詠んだ短歌をベースに、こうやって考えたなあという思考の過程をご紹介してみようと思います。

大前提としてもう一度書いておきますが、筆者は超初心者です。これは筆者流の詠み方、考え方であり、これが正解というわけでは絶対にありません。もちろん推し短歌の詠み方に正解はありませんが、初心者だから参考にしたいという方は、先ほどご紹介した『推し短歌入門』を読んでみてくださいね。

試しにやってみたい!という方は、一緒にチャレンジしてみましょう。

それでは、さっそく始めましょう!


①短歌のテーマにする推しは?

はじめに、誰を、そしてどんなところをテーマにするか決めるところから始めます。

そんなところから!?と思うかもしれませんが、大事なことなんです。

例えば、好きな漫画のキャラクターAくんがいるとします。

彼の好きなところは、

  • 誰よりも強いのにときどき弱さが垣間見えるところ

  • 甘いものが大好きなところ

  • 弟のBくんのことを溺愛しているところ

だとします。(架空のキャラクターです)

Aくんの強さの裏にある弱さ、甘いもの好きなところ、ブラコンなところ、どれも魅力的ですね。しかし、欲張って全部ひとつの短歌に詠みこもうとすると……どうでしょう、難しくありませんか?

要素が多くなれば多くなるほど、多くの単語を使って表現したくなりますよね。でも、短歌の構成は基本的に五・七・五・七・七。たった三十一文字しかありません。あっという間に文字が足りなくなってしまいます。

上手い人なら、比喩などを使ってひとつの短歌に落とし込めるのかもしれません。けれど、我々は初心者です。無理はせず、ひとつの短歌にひとつの好きを詰め込みましょう。

②好きなところを深掘りする

書きたいテーマが決まったら、次はそれを深掘りしていきます。

今回題材にするのは筆者の推しなので、推しの好きなところ大発表会といきましょう。

ちなみに、推しの名前は伏せさせていただきます。(万が一にも迷惑をかけたくないので)今回はXくんとしましょうか。

私が一番好きなのは、まっすぐなところです。彼は大きな大きな夢を抱いていて、それに向かって懸命に走り続けています。叶わないのではないかと思ってしまうくらいに壮大な夢がたくさんあるのですが、彼は絶対に諦めません。Xくんはいつでも前だけを向いていて、気持ちが後ろ向きになりがちな私にはそれが眩しくてたまらないのです。私は、星の光みたいな彼を推しています。

さて、推しについて語っている間に、推しを好きな理由が深掘りできてしまいましたね。こうやって推しへの愛を言語化していけば、あっという間にテーマが広がります。

今回のテーマはXくんのまっすぐさと眩しさ。「夢」「星」「光」というワードも、なんだかいい感じに使えそうなのでもらっておきましょう。こんな風に、いい感じに推しを表す単語が思いついたら一緒にメモしておくといいですよ。


③どういう短歌にしたいか決める

①と②で、テーマが決まりました。それでは、どういう短歌にするか本格的に考えていきましょう。

さっき決めたテーマとキーワードを紙やメモアプリに書き出して、どういうニュアンスを読み手に伝えたいのかひたすら考えます。連想ゲームのようにどんどんテーマを発展させて、使える言葉や言い回し、比喩を増やしていきます。できれば推しへの愛もざっくりでいいので文章化しておくと、この工程がだいぶ楽になります。

この段階では、規定の文字数のことは考えなくて大丈夫。「こんな単語を使いたい」と思ったらひたすら書き出しておきましょう。けれど、実際に短歌の形にする際に字数が合わなくなることも多いので、できるだけ思いついた言葉はたくさんリストアップしてくださいね。

私の例でご説明します。

  • 「星」「光」⇒夜空

  • 「星」⇒七夕、願い事

  • Xくんの眩しさ、夢を星に例えたい

  • 大きな夢に向かって走る⇒届かない星に手を伸ばす

こんな感じで、考えたことをひたすら手帳に書き出しました。自分にだけわかればいいので、形式は自由。

このあたりまでくると、自分がどんな短歌が詠みたいのかだいぶわかってきます。この短歌では、箇条書きの最後をメインのシチュエーションにすることにしました。

要素がそろったら、いよいよ短歌にしていきます。


④五・七・五・七・七に当てはめる

ここからは、短歌の形にする作業です。

まずは構成を考えるところから。「星に手を伸ばす」行為をメインにしたいので、それが一番映える言葉の配置を考えます。

「手を伸ばす」で五音なので冒頭に置くこともできますが、そうすると読者の脳内カメラが手のアップから始まってしまいます。あくまで星にXくんや彼の夢を投影し、それに手を伸ばしている図を描きたいので、主題が少し変わってきてしまいますよね。こんな風に、言葉を置く場所を変えながら検討していきます。

主題は夢なので、冒頭の五音には夢を入れることにします。Xくんの夢は壮大で明確なゴールはありません。だから「夢に終わりなどない」で十音。五音+七音で十二音ですから、「この夢に終わりなどない」と指示語を足して帳尻を合わせます。

ここで、この短歌の主語が筆者ではなく彼のものになりましたね。私の場合、こうして詠みながら視点や主語を決めていきます。決めるまでは試行錯誤の連続ですが、一度確定させてしまえばかなり作業が楽になりますよ。

さて、残りは五、七、七。「星に手を伸ばす」という要素をまだ残していますが、これだけを述べるには十九音は少し多いですね。では、どうするか。「終わりのない夢」と「星に手を伸ばす」を彼に繋げる表現を組み込めばいいのです。

Xくんの夢に終わりがないように、夜空の星もたくさんありますね。これを少しロマンティックに表現します。「星を掴んだ先にも空は続いている」なんてどうでしょうか。もちろんこれだとただの文章になってしまうので、短歌の形式に合わせて書き換えていきましょう。

「あの星を掴んだ先にも空はあるから」
これだとどうでしょう。ちょっと短歌らしくなったと思いませんか?ひとつの小さな夢を叶えても、その先にはもっともっとたくさんの星がある。それをひとつひとつ叶えていってほしい……というオタクの願望を詰め込んでみました。推しへの愛を込めた表現なんですから、少しくらい気持ち悪くても気にしません。

先ほどの上十二音と組み合わせた完成系がこちら。

この夢に終わりなどない あの星をつかんだ先にも空はあるから

これで完成です!

「掴んだ」は漢字をひらくことにしました。前後に「星を」「先にも」「空は」と漢字が続くので、画数の多い漢字を挟むとバランスが悪いと思ったからです。短歌は基本的には改行せず一行で表記するので、漢字とひらがな、カタカナのバランスは気にしたほうがかっこよく決まります。


いかがでしょうか。意外と簡単に作れるんだと思いませんでしたか?

筆者のような素人でも、こういった工程を踏めば推し短歌を詠むことができます。もちろんこだわる人はもっともっと短歌の沼に沈んでいけるのでしょうが、私はこれくらいの短歌でも満足です。なぜなら推しへの愛を叫べたから。

こんな感じでいいんだ!と思えた方は、ぜひ推し短歌を詠んでみてくださいね。


おまけ・画像メーカーを使ってみよう

完成した短歌を投稿しよう!と思っても、いざXなどに投稿しようとすると、なんだか寂しい気がしませんか?

文字だけだとなんだか寂しい印象

そこで、おすすめなのが画像メーカーです。

正式名称を『短歌の色紙』というこちらの画像メーカーでは、簡単な操作で短歌をおしゃれな画像にしてくれます。短歌そのもののほかに推しの名前、タイトルなどの情報も入力できる欄があるので、それらを自由に記入して、できあがったのがこちら。


完成品

背景色や文字の色、フォントなども指定できるので、星空をイメージした組み合わせにしてみました。ほかにもお手持ちの画像を背景にして作成することもできますよ。(著作権等にはお気を付けください)

画像なら、Xに投稿してもTLに埋もれてしまうことはありません。
ハッシュタグなどをつけて投稿すれば、同好の士に見てもらえることでしょう。


まとめ

推し短歌の世界について、おわかりいただけましたか?

ほんの少しでもこの文化の楽しさが伝わっていたなら嬉しく思います。

最初にも述べたように、推し短歌という文化はこれからもっと広がっていくことでしょう。なんだか高尚でとっつきにくいように思われる短歌ですが、推しへの愛を叫ぶオタクとはとても相性のいい表現方法なのです。

少しでも興味を持った方は、まずXなどで「推しの名前 短歌」と検索してみてください。きっと誰かが短歌を投稿しているはずです。

この記事を読んだ方が、同じ推しを愛する人の詠んだ歌を見て、自分でも歌を詠んで、推し短歌って素敵な文化だなと思っていただければ何よりです。 

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