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またね

会いに行くと言って連絡がきたあと
彼は最終電車で私の最寄り駅に向かっていた。
待ち合わせ場所にいる彼の後ろ姿はどこか寂しそうで孤独に感じた。
またね、が言えないだろうとそこで悟った。

彼は私とあまり目を合わせることをしなかった。
話すときも、どこか悲しそうにしている。
なにかを求めるように、寂しさを紛らわすように私にひたすら話続けていた。
彼は私を求めるようにそばにきて、離さないでと言わんばかりに強く手を繋いだ。

その日、私は離れてしまったら崩れてしまうんではないかと強く抱きしめてしまった。
愛のない時間、あなたは都合のいい関係でいいと言った。悲しそうに私も見つめる目がほっとけなくなってしまって、もう一度強く自分の胸に引き寄せた。彼は強く抱きしめ返してきた。
あなたはよくわたしの香りが好きだと言っていた。
この日も頭に記憶するかのように身体中に鼻筋が触れていた。

初めて夜を一緒に過ごした。
全てが終わったあと、私は話した。
好きになった?
そんなの答えられないな。
じゃあ嫌いになったんだ。
それは絶対にないよ。
そんな薄っぺらい会話をした。
今思えばどうゆうことだったのか全くわからない。
彼は先に寝ていいよ。俺はまだ寝ないからと私を先に寝かせた。
だけど、彼は変わらず何処か孤独で頭の中にいる自分と悲しい会話をしてるように見えた。

お土産にさ、首につけてよ。
彼はそんなふざけたことを口に出した。
その跡を見るたびに私を思い出しちゃうよ、いいの?て聞くと
そのためじゃん。と。
煙草を吸う後ろ姿が、空っぽになっている彼の心を映し出すように孤独に包まれていた。
いや、空っぽではなかったのかもしれない。
なにかに押しつぶされそうで必死にもがいていたのかもしれない。
きっと、それが私の存在でなかったとしても切なくなった。

ごめんね。
あなたは私を幸せにすることはできない。
だけど、私もあなたを幸せにすることできない。
あなたのその孤独を救い出すことなど自分には無理だった。

彼はいつも話すたびに言っていた。
都合いい関係でも会えればいい
今の人と別れてなんて言わないから近くにいれればいいと。
今思えば、出会った日の朝方から間違っていたのかもしれない。
あんなに輝いていた朝は今までになかったと二人でよく話していた。それはお互いの勘違いで、ただ一緒にいたそれだけの朝だった。

ありきたりな都合のいい関係とはなにかが違う気がしていたのは自分たちだけだったのかもしれない。
ごめんね。自分は最低な人間なんだ。
もうこれで全ておしまい。
帰り際あなたは、またねと言っていた。
私はじゃあねと言った。

またねなんて言わなくてよかった。








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