ブルージャスミン

3. 「自意識もほどほどにね」っていう3本

自分のところにきたあるOB訪問の学生さんOくん。利発そうなお顔立ちですらすら立て板に水のような話しぶり。どこでも受かりそうだけどなあと感じながら話していたら、15分くらい話してなんだか引っかかるセリフが分かってきた。

「いやー自分、そーいうキャラじゃないんですよねー」
「まあ、そういうこと自分いえるキャラじゃないんすよね」
「そうなんすよ、自分こういうキャラなんで」

とかとか。キャラキャラうるせえよ!と笑 自分にとっての自分らしさを、自分がちゃんとわかっているということは大事だと思う。けど、一方で残念ながら世の中からすれば、その人が「その人らしいかどうか」は、それ自体はどーでもいいんですよね。その人がその人らしいことによって魅力的かどうかが本質であって、自分で「自分らしいかどうか」ばかり他人に伝えて、相手にとってその自分らしさがどう意味をもつのかに無関心。それじゃいかんよなと。だからそんな、自分を売り込む就活の場でキャラキャラ言いすぎるんじゃないと。って、そのまんま言っても面白くないので笑、やんわり突っ込みながら、この3本を薦めます。

===

ブルージャスミン

2014年5月公開
監督:ウディ・アレン
===
かつてセレブだった転落未亡人が、虚栄心から破滅していくお話。 怖い話。人は人にどう思われているか、という点において、いかに「自分らしさ」を自分が知らず知らずのうちに定義づけてそれにはまってしまっているか、良くも悪くも、と思います。ジャスミンの場合は、それを自分らしさと信じ切ったが故に、その評判を保つことと、自分らしくあることを取り違えた悲劇、という。怖い話でした。事実と、自分の思う自分らしさとのギャップが生み出す恐ろしい自我崩壊のお話。ケイト・ブランシェットが上手すぎ。この自意識過剰からの学びは「生活水準を下げるのも勇気のうち」かなw

ヤング≒アダルト

2011年公開
監督:ジェイソン・ライトマン
===
37歳バツイチのライターが、出産報告を送ってきたかつての彼氏に色めき立ち、帰省するお話。痛い、ひたすらに痛いこじれたアラフォーのお話し。これがまたぶち抜けた美人のお話だというのがホラー。主人公のこじれ感の描写がどれもよくできていて、あああああって感じになります。こんな人おんのか??というくらい描写は苛烈ですが、エッセンスは誰もが心の中に飼っているモンスターなんじゃないかなとも思う節あり。まっとうに老いるとはどういうことなのか考えるとともに、「まっとう」とか考えるからとらわれるような気もします。なるように運命を受け入れてその中で一番楽しいほうに行こうよっていうのと、過度な主人公願望は身を滅ぼすのであるという、ホラーですねこれはw この自意識過剰からの学びは「キャラの一貫性なんか多少矛盾してもいいから現実的に生きよう」ってことでw

アメリカンビューティー

1999年公開
監督:サム・メンデス
===
アメリカの平凡な核家族が崩壊していくお話。空しいお話ですよ。コミカルに人間の哀しさが描かれてて、リアルで、恐ろしいね。みんな、結局アホで愚かで見栄っ張りなのねっていう。アメリカの”幸せ”な家庭に対する、強烈な皮肉映画。ケヴィン・スペイシーの哀しい中年男が、リアルで、哀しい笑 人はどうしても多かれ少なかれ他者と自分を比べることによって幸せを確からしく感じようとしたり、自分自身のアイデンティティを揺らがせるような存在を否定することから裏返して自己を肯定しようとしたりする。でもそれは無限に相手のいる、終わりと完成のない自己肯定の迷いであり、そりゃ仏陀も何十年もそこから解脱するためだけに修行するわっていう。どうやって今手の中にあることで自己充足できるか。これはおバカなつまらない核家族、自分とは違うわって思う自分の一方で、なんか根っこはすごく、共感してしまう部分もあるなあと。この自意識過剰からの学びは「感謝は声に出して、今の自分に満足すべし」ですかね。

===
自意識とどう向き合うかっていうのはさ、ものすごく難しいことで、応えなどないんだけど、ものすごく厄介だからこそそこさえ乗り越えられればいろいろラクになるよなあと思う。自分だってそこのところ全然できていないし、どーしようもないことで揺らぐし、それでそんな自分にまた自己嫌悪で、救いがたいw ひとつそこから抜け出す答えとして自分が思うのは案外、「自分の存在なんて忘れるような、熱中することに時間を使うべし」ってことだと思う。自分を消す。自分が意識から消えるくらい何かに入り込めば、その入り込むものが自分になっていくんだと思うわけで。この3本の映画に出てくる自意識過剰たちはみーんな、それがない。他人と比べても比べなくても最初はどっちでもいいから、のめりこむもの見つけてちょっとずつやろうぜってことだなあと改めて、そんなに目新しい結論じゃないけど思うわけです。

なのでOくん。自分のキャラかどうかは、まあどっちでもいいよ。だから「何をしたのか」「何をしたいのか」を軸に、就活頑張って話してください。キャラは、その話から相手が感じるものなので、まあそんなに焦って話さなくてもOKですよ。ご武運を。

※3本の映画の個別のレビューはタイトルのリンク先にて!そのほかの映画レビューはFilmarksでやってるので是非フォローしてくださいまし。

この記事が参加している募集

サポートありがとうございます! 今後の記事への要望や「こんなの書いて!」などあればコメント欄で教えていただけると幸いです!