34. おなかが減り、心が満たされる映画3選
今回は、同じ部署の同僚Eくんから、おいしそうなお題をいただいたので、それに応えたいと思います。久々のリクエストなので、じっくり考えました。
「観ていておなかが減る映画を3つ教えてください!ジブリ以外で!」
ジブリなしというのが中々いいなと思いつつ、結構そうすると、ふと思いつくものが少なかったのは事実。でももう一つの条件として、単にうまそうなものが劇中に出てくるだけでなく、その食を通じておなかだけでなく、心が満たされるような物語を観たいとのこと。やっぱりおなかと心はつながっていると思うし、心を満たす描写の象徴として食事のシーンって映画でも常套手段として使われるなあと思ったり。個人的に、この食はほんとうまそうだなあ…と思った記憶に残っている映画を3つ、書いてみたいと思います。
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おくりびと
2008年公開
監督:滝田洋二郎
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思いがけず納棺師をやることになった元チェロ奏者の人生のお話。当時、仕事を一瞬さぼって会社の隣の東劇でわざわざ観てとてもよかったのを覚えています。殊、若いとさ、理屈では分かっていても、感覚として、自分が死ぬ気ってしてないと思うんですね。でもそうやって、現に人々の普通の日常の中で人は死んでいって。そりゃ不幸に間違いはないのですけど、悲しみだけじゃない、その向こうにちゃんと意味があるのと。なかなか気付けないことなんですけどね。死ぬことを自分の生き方の身近に置くことで初めて、自分の生き方が鮮やかに大切になるとすれば、死にたくない、という以上のステキな生き様になるのでしょう。難しいでしょうけど、どうしよもないくらい。モッくんが、芝居くさくなくて、渾身。広末が、いい嫁すぎて萌えます。この映画のおなかが減る一品は「ふぐの白子」。山崎努演じる納棺社長の「これだってご遺体だよ」といいながら食べるその姿が、まあ、うまそうに食うわけですよ。はふはふという擬音語がぴったり。生と死とどう向き合うか、考えながらうまそうに食う白子。名シーンとして名高いけれど、あえて挙げます。
シェフ ~三ツ星フードトラック始めました~
2014年公開
監督:ジョン・ファブロー
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評論家に酷評され、怒りの様をSNSで拡散されたどん底料理人が、キッチンカーで再起を仕掛けるお話。監督のジョン・ファブロー自ら主演での作品。彼は僕はやっぱり「アイアンマン」シリーズの監督という印象がとても強かったので、こういうのも取れるんだ!と一本取られた感じで、とても良かったです。料理のシズルが抜群で、やっぱり「おいしそう」ってのが何より大事ですよね。この映画のおなかが減る一品は「ホットサンド」。キューバサンドとも表現されてましたけど、再起をかけたキッチンカーで選んだ勝負メニューとして、飛ぶように売れるんですが、チーズのとろけ方が素晴らしくうまそうで、うちの会社の近所にきてくんねえかなあこのキッチンカー、なんて思ってしまう一品。主人公の設定が、元々は3つ星シェフということもあって、本物のシェフがB級グルメに全力投球しているっていう流れもシズるわけです。主人公のプライドも、家族の絆も、ホットサンドがすべて上向きにさせてくれるわけですが、それ抜きにしてもうまそうだなあと心から思える一品ですです。
クレイマー、クレイマー
1980年公開
監督 : ロバート・ベントン
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仕事にかまけて家庭を顧みないエリートが、妻に出て行かれたことで息子と向き合わざるを得なくなるお話。人は自ら向き合おうとした分しか、相手から向き合ってもらうことはできないという物語。言い換えればいつも自分が「先手」であって当たり前で、自ら働きかける前に、相手を求めては進まないということなのだと強く感じる作品です。なかなか、存在して当たり前の関係性にその気持ちを持ち続けることは難しいことなのだけど、その切なさやむずかしさ、覆水盆に返らなさなどなど、全部ひっくるめて、ほんとに名作。この映画のおなかが減る一品は「フレンチトースト」ですよね、なんといっても。シンボルとして、この一品の変化が、親子の関係の変化を象徴して、物語は進みます。何の変哲も、創るむずかしさもないこのメニューだからこそ、不器用な父親のあり方を写し鏡のようにあらわしていて、最後は、泣けます。ちなみに上の「シェフ」にも、ダスティン・ホフマンがちらっと出てくるわけですが、それは監督がストーリー構築の際、「クレイマー、クレイマー」のフレンチトーストのエピソードにヒントを得たことへの謝意も込めてのキャスティングだというお話もあったり。
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自分のまわり、特に親族を観ていて、人間には「フィード欲」という、誰かに何かおいしいものを食べさせてあげたいという、no reasonな欲求が多かれ少なかれあるんだと思っていて、それって言い換えれば、「人は、人がおいしそうな顔をして何かを食べているのを観るだけでハッピーになれる」っていうことなんだろうと思います。食ってそう考えるとものすごくコミュニケーションだし人間関係だし、おいしいものを一緒においしいと言い合える人がいることがいかに幸せなことか、こういう映画を観ているとつくづく思うわけです。そんな観点で、観たことあるものも混ざっているとは思いつつ、是非是非見てみてくださいませ、E君。
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