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ヤマトタケル物語【隣のシグナス】《4.二つの願い》

こんばんは! 湘南占い◆白樺の騎士団・七庭(ななば)です。

今回は「ヤマトタケル物語【隣のシグナス】」の続きをお送りします!

前回のお話は下記をご覧ください。(第4話の冒頭にも簡単なあらすじをのせています)

第1話からお読みになりたい方はマガジンからどうぞ♪


イラストは前回に引き続き川上ケイコさんにお願いしました!

素敵なイラストをありがとうございます(^^)

※この作品は私の創作神話です。無断転載、二次利用はご遠慮ください。(©︎2020 白樺の騎士団 七庭育)


◆夢の中で

【前回までのあらすじ】再び草薙の剣を手にしたヤマトタケルは、フレイと共に尾張の国に一泊することになる。これからの旅に思いを馳せながら眠りにつくと・・・


その夜、私は夢をみた。


大和の国の皇子として生きていた頃の記憶。

それが夢の中で鮮明に再現されていた。


"私の行動一つで、国や多くの人々の運命が大きく左右されてしまう"

その事実は、皇子として生きていた私の心に常に重くのしかかっていた。


"自分の国を守りたい、兵士や民の命を守りたい"

その一心で、ひたすら戦い続けてきた。


しかし、あるとき気づいてしまったのだ。

"戦っている相手にも自分と同様に守りたいものがある"ということに。

私は倒してきた者たちの思いを背負いながら諸国を平定した。


敵地で戦い続ける中で、強まっていく望郷の念。

一体いつになったら戦いは終わるのだろう。

本当に私は大和に帰れるのだろうか。


迷いや不安を胸に秘め、私は旅を続けた。

どんなに苦しくても、それを周囲に悟られるようなことがあってはならない。

私の態度や振る舞いは、兵士の士気に大きな影響を与えてしまうからだ。


旅の途中で妻に先立たれたときの大きな悲しみ。

"もう誰も失いたくない、誰も犠牲にしたくない"と強く思った。

"守ること"はなんて難しいのだろう。

大事な人を、大事なものを守るために戦ってきたのに、私はいちばん大切な人を亡くしてしまった。


"もう戦いたくない。誰も死なせたくないし、誰も殺したくない"

どんなに強くそう思っても、私は戦いから逃れることができなかった。

皇子である自分が勅命に背くわけにはいかない。

私は課せられた使命を全うするしかないのだ。


深い悲しみの中で、私は願った。

"大和の国と大事な人を守りたい"と。


"でも…願うのはそれだけで良いのだろうか?"

私の脳裏にそんな疑問が浮かんだ。

自分の国や大事な者を守りたいと思っているのは私だけではない。

敵対している他国の者たちだって、そう思っているはずだ。

私は諸国を平定し、1つの大きな国をつくるために戦ってきた。

つまり私は大和の国の人々だけでなく平定した他国の人々も守っていかなくてはならないのだ。

これまでずっと、私は"国"という枠にとらわれていたのかもしれない。

どこの国の人も守りたいものを持っていて、それを失ったら悲しみを感じる。

私は大事なものを理不尽に奪われる痛みをもう誰にも味わってほしくない。

自分の国の人々にも、他国の人々にも。


私は全ての人を守りたい。

全ての人たちを幸せにしたい。

それが私の心からの願いだった。

たとえ理想論と言われようとも綺麗事と言われようとも私は諦めたくないーいや、諦められないのだ。

犠牲になった人たちのためにも、愛する人たちのためにも。




「おはよう」

目が覚めるとフレイは先に起きていて、剣の手入れをしていた。

「やっくん、おはよう。よく眠れた?」

「うん、まあね」


私は夢のことは話さないでおくことにした。

いつか誰かに話したくなる日がくるまで、自分の胸にしまっておきたいと思ったからだ。

そして私たちは、これからの旅についての話し合いを始めた。





◆二つの願いを抱きしめて

ここで一旦、物語は現代に戻ります。ヤマトタケルの依頼で「隣のシグナス」を執筆した私。原稿を提出する際に"ある思い"を告白します。

「お待たせしました! こちらが今回の原稿です。続きはまた今度持って来ますね」

「うん、ありがとう」

ヤマトタケルに原稿を渡した私は、思いきって自分の気持ちを彼に伝えることにしました。

「私、あなたのことが好きです。どうか私にあなたの願いを叶えさせていただけませんか? 少しでもあなたの力になりたいんです」

私がそう言うと、ヤマトタケルは少し驚いた顔をしつつ続きを話すよう促しました。

「自分の国を守るという使命を背負うだけでも大変なのに、戦う相手の思いまで背負って全ての人の幸せのために戦うなんてすごいと思います。そのおかげで今の平和があるんだと思うと、感謝してもしきれないです」

「・・・・・」

「あなたは大和の国の皇子という立場を超越して、この世界の守護者になられたんだと思います」

そして私は呼吸を整え、いちばん伝えたかった言葉を口にしました。

「私はあなたの苦しみも喜びも、人々や世界に対する想いも全部受け止めたいと思ったんです。そしてできればあなたの願いを叶えたい。つまり全ての人を幸せにするお手伝いをしたいんです」

「・・・そうか」

「はい。ただ、どうすれば良いかわからなくて・・・。"全ての人を幸せに"って言われても、規模が大き過ぎてよくわからないんです」

「お前は自分の周りの者や愛する者を大事にすれば良い。無理に全員を幸せにしようとしなくて良いんだ」

「なるほど・・・わかりました」

「そして、幸せになる気がない者を幸せにすることは誰にもできない。本人が幸せを望まなければ、周りが何をしてもどうにもならないんだ。そのことを常に心に留めておきなさい」

「はい、肝に銘じます」

「それと、もっと自分自身の願いを大事にするんだ。私の願いを叶えようとするではなく、自分自身の望みを実現するために私の力を活かしてほしい。お前の人生の主役はお前自身だ。私の意向に合わせようとせず、自分の意志で道を選んでくれ。どんな道を進むことになっても、私はこれからもお前と共にある」


私自身の願い・・・

思いきって、私は長年の夢を赤裸々に告白することにしました。


「私の願いは、占いで人を笑顔にすることです。どうか力を貸してください! ヤマトタケル様と一緒に、たくさんの人を幸せにしていきたいんです!」

「わかった。それなら喜んで協力しよう」


このときの会話がきっかけで、私は本当に占い師になりました。

ヤマトタケルは宣言通り、常に鑑定をサポートしてくれています。


自分自身の運命に勇敢に立ち向かい、国という枠から自由になった大和の国の皇子は神になり、今もここで全ての人々の幸せを願い続けているのです。

ヤマトタケルの願いと私の願い。

重なり合った二つの願いを抱きしめながら、私は今日も鑑定をしています。

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さて、私の話はこのくらいにして次回からは本編に戻りますね。

ヤマトタケルの伝説はこれからもずっと続いていくのですから。



今回はここまでです!

お読みいただき、ありがとうございました(^^)

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