黄色いハモニカ横丁
彼女が東京へ帰ってきた五月、ハモニカ横丁に入った。
狭い路地の中に屋台風の飲み屋が所狭しと立ち並び、独特の雰囲気を醸し出している。
彼女の彼が好きだというお店へ向かうが、満席で入れない。土曜の夜は、つらいね。
半分学生のような三人は、立ったままビールを飲んで、泡立った液体が顔を黄色く照らした。
あの店の串焼きがすごくおいしいんだと、別の店で肴をつまみながら話している。
今日入れなかったあのお店、今度行こうと話しながら、彼女の彼とはもう会えない。
さよなら、黄色く光った彼女の元彼。
さよなら、食べられなかったハモニカ横丁の串焼き。